椿本力三郎

ナポレオンの椿本力三郎のレビュー・感想・評価

ナポレオン(2023年製作の映画)
3.8
本来であれば6時間くらいの尺が必要な表現と情報量を
思い切って2時間40分弱に仕立てているせいか、
あまりにもアッサリと描かれてしまっている。
そこに薄いとか浅いという印象はないので、
4時間とされている配信版のダイジェストとして捉えるべきなのかもしれない(このシアターと配信の関係性は、それはそれで新しいと思う)

鬼神というべき軍人としてのカリスマ性、
政治家としての守りの強さ、狡猾さの一方で、
常にジョゼフィーヌが心にいるナポレオンの人間臭さを
矛盾なく両立させたホアキン・フェニックスの演技はさすが。
権力者の強さとはかなさについて、
満州の愛新覚羅溥儀を描いた「ラストエンペラー」にも似たテイストがあったが、ナポレオンは、大敗し、失脚しても復活してきた。
まさにヒーローそのものである。

一方、その「オス」感満点のナポレオンを虜にしたジョゼフィーヌの「メス」としての魅力がそれほど伝わってこない。
これは女優の力量ではなく、尺の短さゆえだろうが、
あえて「今ここ」で超有名人のナポレオンを映画として描くのだから、
ジョゼフィーヌに「メス」を感じさせるシーンやエピソードこそ削ってはいけなかったように思う。

戦闘シーンの熱量は圧巻で、
やはりシアターで見るべき作品だと思う。
世界史にも重要な影響を与えたそれぞれの戦闘や同盟関係の戦略的な意義については、ほとんど説明がないので、事前に予習しておくべきだろう。