KnightsofOdessa

Eureka(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Eureka(原題)(2023年製作の映画)
3.5
[白人社会に生きる先住民たちの年代記] 70点

リサンドロ・アロンソ長編六作目。前作『約束の地』はボロボロになったヴィゴ・モーテンセンが荒野を彷徨う静かな映画だったので、今回は疲れ果てているだろう釜山映画祭の〆に、言葉の少ない映画を持ってきたくて鑑賞。とても不順な動機だが心地よい映画だったので目的達成。本作品は三部構成で展開される。第一部はモノクロのアカデミー比画面で撮られた西部劇である。主人公マーフィはそこかしこで銃声のする治安の終わってる街にやって来た。何かを探しているようだ。サルーンではコロネルと名乗る女に出会う。といったように、ある種の西部劇クリシェを丁寧に辿り直す上に進む上に、全体的にオーバーアクトだし、画面内に様々な人や物を入れようとしていて実に窮屈だ。すると、第一部は第二部の世界で放映されているTVドラマであることが分かる。といったようにヌルりとした連続性を持ちながら第二部へと続いていく。第二部ではヴィゴ・モーテンセンとキアラ・マストロヤンニが別時代の別人物を演じる『クラウド・アトラス』みたいな感じになるのかな~とヌルいことを考えていたが、アロンソはそんなカロリー高いことは考えないことを忘れていた。第二部はパインリッジ居住区で暮らすネイティヴアメリカンの警察官アライナの勤務風景だ。誰も近くに応援がいない中で粛々と仕事を続ける彼女の姿を通して、西部開拓時代から今に至るまで踏みにじられてきた彼らの生活が浮かび上がる。そんな混沌とした土地に法と秩序をもたらす孤独な警官という立場は、第一部のマーフィとは真逆の立場にある。アライナの孤独な戦いは1時間ほど続くが、段々と吹雪いてくるのも併せて、不穏さが背中に貼り付いているような緊張感があり、とても良い。第三部ではブラジルに場所を移し、第一部と第二部の間の期間を描きつつある種の一般化を行うわけだが、台詞ほぼなしのアロンソ劇場とはいえ第二部には適うはずもなく、尻すぼみに終わってしまった印象を受ける。
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