Lila

マヤを救って -小児医療の実像を問う-のLilaのレビュー・感想・評価

4.5
ドキュメンタリーだからとさらっと見始めてしまいましたが、とんでもない話で撃沈しました。資本主義の悪魔の極みのような話で、ここ最近見た中で最も闇が深い話です。実態の事実を含めて学びの多い作品でした。号泣して余韻が凄い…

こんな事があっていいのでしょうか。

児童虐待の保護システムに関しては、常に疑問で、救える命の数より問題の方が多くて、たくさんの親子にたくさんの傷があります。担当者の判断で親子をいとも簡単に引き離せてしまいます(その昔インターン生として、アメリカで少し経験しました)。そうか、医療虐待という概念まで来てしまってるのか。

子供の事を第一に考えてた母親が最後まで命懸けで。母親の命と執念と記録を元に、その愛や気持ちがあったからこそ、家族が最後まで戦えたと思います。元々少し感情的で不安定なママだったかな?マヤちゃんは言わずもがなですが、弟のカイル君のケアがかなり必要です。お父さんが耐えているのも奇跡です。

序盤から、お母さんのやり取りがメインなのにお父さんしかインタビューにいないあたりから嫌な予感しましたが…、その展開になっていったとき「諦めないで!負けないで!まだ分からない!独りぼっちのマヤちゃんがお母さんに会えなくなっちゃう!!息子くんの人生が!」って叫ばずにはいられませんでした。崩壊しても全くおかしくない状況でしたが、お父さんとの仲違いと響いたはず。どちらも悪くないのに。自分の命と引き換えにマヤちゃんの治療を優先させた結果だからこそ、裁判に持っていけたところもあるのが非情です。

気になって、YouTubeで裁判結果やインタビューを漁りましたが、勝訴して安堵しました。でもトラウマは消えない、崩壊した家族は治らない、前に進むきっかけにすぎない。

アメリカの病院はビジネスなので、自分も採算注意していることを思うと現実は辛いです。病気の子供を抱えている時点で、とんでもないストレスと絶望なのに、せめて病院は正義であってほしい。こんな思いをする家族を生み出してはならないです。

でも病院側の言い分はもう少し知りたかったとも思います。

なお、ドキュメンタリーとしての構成は好みでした。メンタルに寄り添った作りになってる気がします。静けさやテンポ、色味や清潔感、しっとりと没入させてくれました。
Lila

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