KnightsofOdessa

HOW TO HAVE SEXのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

HOW TO HAVE SEX(2023年製作の映画)
4.0
皆さん、良いお年を。

[] 80点

傑作。2023年カンヌ映画祭"ある視点"部門選出作品、グランプリ受賞作品。モリー・マニング・ウォーカー長編一作目。高校を卒業したばかりの仲良し三人組タラ、エム、スカイは夏休みにクレタ島にやって来る。直近の試験結果への不安、来る大学生活への不安、漠然とした将来への不安を抱える三人は、それらを忘れ去ろうとするがごとく、若者たちで溢れかえったプールやクラブで遊び回る。ホテルの隣室にいた年上のグループと知り合った三人は、それぞれ狙いの相手を定めながら交流を深めていたが、タラはそこで初体験を迎える。一人だけ処女だった彼女は他二人(主にスカイ)からイジられまくっていて、今回の旅の漠然とした目標として処女喪失を念頭に置いていたのかもしれないが、あまりパディとのセックスは望ましいものではなく、タラは新たな苦しみを抱えてしまう。そして映画は、取るに足りない瞬間から滑り落ちるように痛みと苦しみの瞬間へと変化していく。タラの変化を知ってか知らずか他二人の態度は全く変化しないことで攻撃性が増し、三人で泥酔して歩いていた夜道は素面ですら恐ろしくなり、爆音のクラブでも音楽が遠のいていく。実に恐ろしく見事な転調だ。また、性的同意の難しさも語られる。確かにYESとは言ったが、あの状況でYES以外に言えたのか。そして、一度は同意した相手との二回目は同意できないことだってある。そんな当たり前だが有耶無耶にされがちな部分をとても真摯にキチンと映像化している。短編『アンスピーカブル』もとても良かった。
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