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犯罪都市 NO WAY OUTのnetfilmsのレビュー・感想・評価

犯罪都市 NO WAY OUT(2023年製作の映画)
3.8
 『犯罪都市』シリーズも数字を振らずに進み出したことで、『ワイルド・スピード』シリーズと同じようにわけがわからなくなりそうなのだが、1作目は中国、2作目はベトナムで今度の舞台は日本である。ベトナムでの凶悪犯一斉検挙から7年が経ち、マフィアも恐れる怪物刑事マ・ソクト(マ・ドンソク)はソウル広域捜査隊に異動し、ある転落死事件の捜査を担当する。捜査を進めるなか、事件の背後に新種の合成麻薬と日本のヤクザが関わっているという情報を入手する。予告編では2人の強力なヴィラン登場とあった様に、韓国には汚職刑事のチュ・ソンチョル(イ・ジュニョク)がいて、日本側には一条親分(國村隼)の指示で、麻薬を盗んだ組織員たちを処理するため極悪非道なヤクザの解決屋リキ(青木崇高)がソウルへ向かうという麻薬争奪戦の様相を呈す。コメディ・リリーフとなる中古自動車屋もそうだが、日本の隣国として正しい情報を幾らでも得られる土壌にありながら、『キル・ビル』的または北野武の『アウトレイジ』シリーズの画面設計を参考にしただろうルックに命を懸ける監督のイ・サンヨンとマブリーの判断はヤバい。

 韓国国内の興行収入100億円は伊達ではない。韓国で国民的ヒーローであるマブリーがいれば他には何もいらないという何物にも代えがたい驚異的な安心感は、ある種の多幸感に繋がる。ここまでの愛されキャラは、世界広しと言えども他にいるだろうか?『ゴジラ-1.0』ですっかり株が上がった優香の旦那こと青木崇高は『仁義なき戦い』の梅宮辰夫ばりの凄まじい怪演で、マブリーと対峙するためにはこれくらいのイキっぷりでないと話にならない。銃を使わない肉弾戦という意味ではある種『ジョン・ウィック』シリーズを超越してしまったようなマブリーの華麗なるボクシング活劇はやはりマニー・パッキャオばりの出足の一歩が心底モノを言う。これはマブリーとジョン・ウィックと『イコライザー』シリーズのロバート・マッコールの巴戦をやれば活劇ナンバーワンは決められるだろうが、イーサン・ハントとジェームズ・ボンドは異議を唱えるに違いない。おそらく限られたシークエンスのオファーだったはずの國村隼の意気揚々としたヤクザ感は完全に暴対法以前の雰囲気で、2000年代に入ってからのヤクザ映画では感じることが出来ぬ風格で、手下を従えビルを闊歩する充実したワンシーンが観られるだけでも必見である。
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