王冠と崑敏

リバウンドの王冠と崑敏のネタバレレビュー・内容・結末

リバウンド(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「リバウンドを制する者は試合(ゲーム)を制す!!」 
~赤木剛憲/スラムダンク

事実に基づくストーリーという事でフィクションのように自由に創作出来ない中でポイントを観客にわかりやすく伝えるように構成する事で、見応えのある良作となっておりました。

①新コーチ就任~新チームリクルート、惨敗、活動停止。
②改めて新チームスタート。
③予選通過~全国大会出場~決勝戦、実際のメンバー達のその後。

と典型的な3幕構成となっており、
①七人の侍のように、※公益勤務要員の新コーチ:カン・ヤンヒョンが苦労して、その目に留まった選手をスカウトとしてなんとかメンバーを集めますが、昔馴染みの2メートル超えの長身のセンターを戦術の中心に置き、折角集めてきた選手達に自由を与えず、センターにパスを集めさせると言った無理のある方向性で、チームに不満は募り、後に主力になる2人ギュヒョクとギボムは過去の因縁でいがみ合っていて、終いには、その長身のセンターが、直前に相手チームに引き抜かれ、そもそもバラバラのチームが急遽即席ポジションで試合をするも上手くいく訳もなく、点差を大きく付けられ、イラついたコーチは審判に暴言を吐き退場処分、喧嘩になった2人、ギュヒョクがギボムに投げたボールが、審判に当たり、没収試合。チームは活動停止。事実上の解散へ。

②おいおいこの先どうするの?と少しだけ不安にさせるも、コーチが現役時代の自分のヒーローインタビューの映像を見て、本当に大切なのは、バスケットボールは個人競技ではなくチームがまとまらなくては勝てない事を思い出し、改めて、メンバー達に謝罪し、新1年生も入り新生釜山中央高校チームが再結成。スラムダンクで5人がやっと揃ってストーリーがどんどん面白くなるのと一緒で、選手集めのリクルートが2回あるのがこの作品の面白い所かもしれません。コーチも自分の非を認めて涙でギボムに謝罪するのは、彼が改心して2度と同じ轍を踏まないだろうと観客への安心感と説得力を生むシークエンスとなっております。ちょっとご都合主義的かな?と思ってしまうシーンも無くはないですが事実なんだろうから仕方がない(笑)

③新体制で挑む大会、新1年生の2人、1人は経験者だが万年補欠のジュユンとマイケルジョーダンのユニフォームを着てきた口だけ?の色モノ的なジヌク。色モノかと思いきや意外となんでもこなせるジヌクとなんにも出来ないジュユン。即戦力になるジヌクと差が開いてしまうのと、そもそも6人しかいないチームに戦力外的な選手がいるのはなにかと不利ですが、これも王道の居残り練習という「努力」で乗り越えて、ジュユンの初めての得点が3ポイントシュートなのは、海南の神が努力の末に天才・三井を凌駕する程の3ポイントシューターになるシーンを思い出しました。それでも、ジヌクの鎖骨骨折、ギュヒョクの足首の故障の不安、そして改善されることの無い選手層の薄さ。満身創痍のチームを鼓舞するコーチ。決勝戦第4クォーター前のブリーフィングで、『バスケットボールはいつか終わるけれども、人生は続くんだ』と自分の経験を踏まえて力を入れ過ぎず抜きすぎないテンションで、チームに語りかけるシーンでジーンと来てしまいました。野球と違って物凄く早く攻守が入れ替わるバスケットボールという競技で、瞬間的に対応策を伝えたり、選手のモチベーションを維持させたり上げさせたり出来るコーチは並ではなかったんですね。決勝戦がどうなるかは、作品を観ていただいて。
メンバー達のその後は、概ね輝かしいモノとなっているようでした。ホンの10年くらい前に実際に起きた奇跡のようなお話でした。高校生バスケットボール部のストーリーではありましたが…

・何事も努力に勝るモノは無い。
・好きな事を楽しんでやる。
・失敗しても取り返すチャンスは必ず来る。
というメッセージが込められていた作品だったと思います。タイトルのリバウンドも、そのプレーだけを指すのではなく、例えシュートに失敗しても、こぼれ落ちて来たボールを如何に拾えるか、失敗を成功に変えられるかが大事なんだよ。というメッセージだったと理解しております。

上映館がとても少ないので残念です。どーーでも良いおバカ青春ラブコメ映画でスクリーンを潰すなら是非この映画を。

※公益勤務要員…公的な機関で福祉や医療、教育、環境などに関わる仕事をすることが、兵役の代わりになる。2014 年に「社会服務要員」という名称に変更になっている。
王冠と崑敏

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