メシと映画のK佐藤

ドラキュラ/デメテル号最期の航海のメシと映画のK佐藤のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

この科学万能の時代にド直球且つ王道な怪奇映画(ホラー映画に非ず。)が公開された事に驚きました。
サプライズやずば抜けた面白さは無かったものの、最後迄安心して観る事が出来ました。
この安定感こそ本作の強みかと。

本作のスタッフ曰く、本作はドラキュラ版「エイリアン」1作目であるとの事。
本作は、その言の通りの内容です。
ノストロモ号がデメテル号になったと思えば、結構かと。
乗組員が一人また一人とゆっくりじっくり屠られて行く過程。
情け容赦ないクリーチャー。
闇の支配する部分が多い船内の異界の様な雰囲気。
正にドラキュラ版「エイリアン」。
なので、あの「エイリアン」の出来が良いのだから、それを踏襲した本作も安定した面白さとなっている訳です。

パンフ掲載の解説文を読んで初めて知ったのですが、ドラキュラの原作小説は複数のドラキュラの目撃談や小話で構成され、それらを全て読む事によってドラキュラの全貌を把握出来る作りになっていると云う所謂オーラル・ヒストリーになっているそうですね。
そして、本作で描かれているデメテル号の航海日誌は、そんなオーラル・ヒストリーの構成要素の一つとの事。
驚いたのが、この航海日誌の分量自体は少なく、難破していたデメテル号と船体に括り付けられていた遺体以外の詳細な描写は無いと云う事。
そんな限られた素材で、上述の様なドラキュラ版「エイリアン」へと昇華出来ている事もまた本作の素晴らしい点だと思いました。

上述して来た様に本作の強みはその安定っぷりなのですが、それが弱みにもなっていたと思います。
外している部分こそ無いものの、話の展開そのものに驚きやずば抜けた面白さは感じませんでした。
本作は難破したデメテル号が発見されたところから始まる…つまり惨劇の尻から始まると云う少々トリッキーな組立なのだから、ミスリード等の手法によりそれを最大限に活かせていれば、サプライズを起こせていたのに…と思います。
船医のクレメンスのみ生存し、ドラキュラは健在。
ロンドンの闇に消えたドラキュラをクレメンスが追うところで本作は終了していますが、これも本来なら冒頭で示された惨劇の尻(デメテル号の生存者無し)とは異なると云う驚きの顛末なのに、小細工無しの直球過ぎる話の組立故にサプライズを感じられなかったが惜しい。