Lila

関心領域のLilaのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.5
ひたすらアカデミー賞ノミネート作品観賞を続けてます。アメリカの映画館で上映してたので没入してきました。

何も情報入れずに、ふわっと観てしまったのが良かったのか悪かったのか。これは内容的にも、作り込み方や芸術的にも、観客を選ぶ作品です。若干覚悟も要ります。

タイトルの「The Zone of Interest(関心領域)」は、第2次世界大戦中、ナチス親衛隊がポーランド・オシフィエンチム郊外にあるアウシュビッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現しているそうです。

冒頭から美しい自然の風景が広がり、サウンドオブミュージックの様な雰囲気を醸し出しながら淡々と家族を描いているのですが、徐々にアウシュビッツの所長であることが分かり、お花を愛でたりしている平和な映像の後ろで繰り広げられる地獄の黒い煙が出る煙突とか、人々の悲鳴染みた音声が怖すぎて、眉間に皺が寄ります。

え、待って、なになにホラータッチの映画だったの!?って観ながら気づきました…怖すぎます。怖い描写は勿論ですが、終盤全員の台詞も悍ましいです。もう、全員がその立場を全うしすぎて人間性を見失ってます。仕舞いには、彼の息子が兄弟を閉じ込める遊びをするという皮肉さ。キツいですって。

追って、ネット上にある所長のルドルフ・フェルディナント・ヘスの生涯や顛末を読めば読むほど、気持ちのやり場がありません。その昔、心理学で学んだミルグラム実験を思い出すばかりですが、人間が生み出したこの恐ろしい世界はたった80年前のこと。

見終えてお手洗い行ったら、若い女の子2人が話してて「良い映画だったって言っていいのか分からないくらい最低な現実だったわ」って言ってましたが、正にでした。

2度と観ないと思いますが、忘れない作品だと思います。

「落下の解剖学」のサンドラ・フラーがこれにも出てるので、2023年は彼女の大ブレイク年ですね。(落下の解剖学の彼女は凄まじいのでぜひ観てください。)
Lila

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