てつこてつ

落下の解剖学のてつこてつのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.0
第76回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。

まさにカンヌの審査員ウケが良かったのも分かるフランス映画。
微妙に何を書いてもネタバレになるストーリーではあるが、数ある法廷サスペンスや一つの死体に関わる人間たちの謎解き=犯人捜しを主軸とした娯楽作品群とはひと味もふた味も違う作風。

状況証拠だけで複雑な謎解きをいとも簡単にやり遂げるハリウッド映画で見られる名探偵物に対するアンチテーゼとして斬新。但し、今後、本作のようなオチを使った作品を制作するのは相当ハードルが高いだろうな。

150分という長尺の上映時間も自分は全く気にならなかった。

脚本も手掛けた女性監督ジュスティーヌ・トリエは、実際に似たような事件の裁判を傍聴、もしくは記録を熟読したのか、作品の大半を占める法廷シーンのやりとりは実にリアル。リアルだからこそ、ああいうエンディングを迎えても視聴者を納得させる力がある。

語学オタクの自分には、被疑者である妻がドイツ国籍ゆえにフランス語がそこまで堪能ではなく、法廷でのフランス語による質疑応答に対して、ほぼほぼ英語で答えるという設定も面白かった。

凄く気になったのは中盤の一家が飼う犬のシーン。あれには背筋が凍った。あれは犬の名演技なのか、はたまた・・?

ラストシーンで妻の側にその犬が駆け寄り横になるのは何らかの意味があるのかは考察好きな方の興味を大いにそそるだろうな。
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