さすがは『キャロル』のヘインズ監督、すべてが洗練して完成されたまとまり方があまりに好みだった。
誰かを理解しようとする時、我々は真に相手を“理解”しようとしているだろうか。自分自身に誘導尋問するかのように、相手を自分の解釈に当てはめるだけのゲームをしてはいないだろうか。
“話題の人物を研究”する女優を通じて、実話をアートにしようとする人々の視線に潜むバイアスを皮肉で刺しまくる鬼のような脚本は、アカデミー賞ノミネートも納得のクオリティ。
一貫したテーマを伝えるために、衣装や小道具によるメタファーや撮影構図の工夫も徹底されていて、そこをナタリー・ポートマンとジュリアン・ムーア、そして注目の新星チャールズ・メルトンというトリオそろっての最高級の演技が完成させる。
終盤、ナタリー・ポートマンがすべてを持っていくあるシーンはこの映画の真骨頂。本人が一生懸命であるほど滑稽で、共感性羞恥すらわいてくるすばらしいクライマックスだった。
音楽面でも、しっとりしているようで荒々しく耳に残るピアノのメロディが印象的。
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