てつこてつ

PERFECT DAYSのてつこてつのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.4
この懐かしい作風は、確かに自分が高校生の頃に「パリ、テキサス」「ベルリン 天使の詩」でハマったヴェンダース。

でも、本作に関しては、残念ながら自分はそこまで好きになれず・・

ヴェンダース監督自身が「THE TOKYO TOILETプロジェクト」に賛同した事もあって制作されたらしいが、本作の主人公、こんな綺麗なトイレばかり掃除してるのかと・・。渋谷区は行動範囲外なので単に自分の無知のせいかもしれないが、自分はこんな洒落た公衆トイレなんて見たことない。また、“THE TOKYO TOILETS”とチープなフォントで大きくプリントされた作業服なんて、普通、清掃員の方は着たくはないのでは?と思ってしまう。


東京を舞台にしているだけで、監督もあえて日本人観客向けに制作しているわけでもないので致し方ない部分もあるが、それにしても作品内で登場する日本文化が、富士山のタイル画が描かれた公衆浴場であったり、テレビには大相撲やプロ野球、昼飯を食う場所の背景には神社の灯籠、スカイツリーや東京の大都市ならではの夜景がちょっとベタ過ぎて、まるでNHKBS1の「COOL JAPAN」を見ているよう。

「ライトハウス」でも使用された真四角の画角での撮影手法は登場人物の表情を引き出すのに効果的だし、ヴェンダースらしくとにかくライティングが美しい。にしても、主人公が住むボロアパートの二階の角部屋が常に怪しく乳白色?に光ってるってのは、美しいんだけどちょっとやり過ぎ感。

小物にもこだわりが見えるのだが、主人公が使う読書用のスタンドライトなんて、昭和レトロを通り越してあまりにも奇抜なデザイン過ぎて、かえって高いんじゃないかと思ってしまう。

石川さゆりの登場にも驚いたが、使われ方がこれまたベタであまり好きではない。

主人公がどんな人生を送ってきたのかをあえて説明せず、姪っ子や妹を登場させる事で、なんとなくではあるが徐々に伝わってくる脚本構成は好き。

なんと言っても、実年齢よりはるかに若々しく見える役所広司の存在感は抜群。ラストの表情のアップの演技は、カンヌ主演男優賞受賞も納得。
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