アー君

タブロイド紙が映したドリアン・グレイのアー君のレビュー・感想・評価

3.5
今回で「ベルリン三部作」すべてを鑑賞した事となったが、今回の作品が個人的には難解であり、ニュー・ジャーマン・シネマの一派からみれば、ファスビンダーとは一味違う作品であった。

主人公のドリアン・グレイはオスカー・ワイルドの小説からの大胆な登場である。演じたヴェルーシュカ・フォン・レーンドルフは中性的な雰囲気を併せ持ったデカダンスの模範囚。時が経っても映像から映し出された彼の美しさは恒久的であり、皮肉なことに老いていくのは小説の肖像画のような私達である。

ストーリー構成は権力政治の世界にオペラの劇中劇を挟み込んだり、新聞紙のみで作られた衣装やセット、報道機関を鶏の象徴とするブラックユーモア、画角の狭いテレビモニターは時代を感じさせたが、ペンタブレットや現在の端末の進化によるズーム機能を予測させるのは微笑ましい描写である。

音響効果は肌感覚として単一的なKraft work よりも少し抑揚のあるTangerine Dreamに近い印象があった。

オッティンガーの映画は耽美ではあるが、唐突にシーンが交錯して鮮烈であり、現代美術でいうところのフルクサスのパフォーマンスの影響はあるとは思うが、良い意味で自分の世界に浸っているので理解し難いところに好き嫌いが明確にあらわれるが、ハリウッドに対するアンチテーゼとしては必要不可欠な存在である。

〈ウルリケ・オッティンガー ベルリン三部作〉
[ユーロスペース 18:25〜]
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