Hara

バカ塗りの娘のHaraのレビュー・感想・評価

バカ塗りの娘(2023年製作の映画)
4.0
「津軽は私のアナザースカイ」なぁんて思いで鑑賞。

大きな出来事がある訳ではなく、主人公美也子の成長と家族の再生の物語。
漆を塗る、研ぐ、磨く音がBGM。
静かな映画。

それでも退屈する事のない2時間。

ひとつは伝統工芸の魅力。
津軽塗りは手が掛かり、思いが詰め込まれ、その分一生もの。
父と娘、ほとんど会話もなく「見て覚えなさい」的に受け継がれる技巧。
それと同じ様に観客にも細かな工程の説明はなく「え?そこで卵⁈」と驚かされながら、ある部分置いてきぼりになりながら、だけどその技巧に見入ってしまう。

そして堀田真由。
薄いメイクにダサい衣装。それがとても魅力的。
パッション溢れる大奥・家光と同じ人とは思えない。

美也子は自分の思いを言葉にする事が苦手。
「このままではだめだ」と思いながらも家族の為にスーパーのパートを続ける。
笑顔を忘れたかの様に。

フードコートでの母片岡礼子との場面。
圧の強い視線でぐいぐい来る母。
目も合わす事が出来ず上手く思いを言葉に出来ない娘。
「あなたは昔から都合が悪くなると黙り込むのよ」
いやいや、黙り込んでるんじゃなくて自分の思い、津軽塗りをやりたい思いをどう表現したらいいのか分からないだけなんだから。
そしてラスト、自分の道を見つけた美也子が「私も飲むよ!」そして心からの笑顔。
ほんとホッコリ。

季節ごとに違う姿を見せる岩木山。
弘前城のお堀と桜。
それに津軽弁。
かなりの回数出張で行った懐かしい、大変な事もあったが結果いい思い出ばかりの弘前を堪能。
貝焼き味噌も美味しかったな〜。
物足りないと言えば弘前ねぷたをもう少し映して欲しかった。
先導する大太鼓の荘厳さとヤーヤドーのかけ声。
もう一度見に行きたいなぁ。
だけどやっぱり津軽の人は優しいね。
Hara

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