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夜明けのすべてのtkykのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.0
人間関係や登場人物の心情の変化はささやかでありながら正確に描写しており、起こる出来事のスケールは非常に小さいながらも観終わった後の変化は劇的に感じられた。
山添と藤沢の話がメインでありながら、登場人物それぞれに抱える事情や心情が描かれるので、主役2人だけの話というよりも、その周りの人々との有機的な繋がりについての話のように思えた。それらの繋がりの中の1つとして山添と藤沢の関係があり、場面が進むにつれ、相互に理解し合う関係性へと変化していっている。関係性の変化は個人の変化と不可分であり、山添の変化は自転車に乗るなどの些細な行動の変化によって示されていた。この細やかな演出に人物描写の巧みさが感じられた。
そしてそのささやかながら確実な変化があるからこそ、山添と藤沢の成長が実感となって表れるのだと思う。その点で山添の上司に非常に感情移入できたし、抑制された演出も非常に好感を持てた。

派手なことは何一つ起こらないが的確な演出によって、確実に見応えのあるドラマが生まれている作品だった。
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