Hara

夜明けのすべてのHaraのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.2
とても温かい映画。
『ゴールデンカムイ』の様なワクドキエンタメもいいが観た後に優しい気持ちになれるこんな映画もいいなぁ。

以下ネタバレも含みます。


『生きづらさ』を抱えた男女が出会い、支え合うとなるとそこから恋愛感情が生まれるのが普通のパターン。
ストーリー後半で交通事故や暴力事件が起きるってのもよくあるパターン。

この物語では何も起きない。
ごく普通の人たちの普通の毎日。
動作や表情、台詞もほんと何気ない日常のよう。
BGMも終始穏やか。
だけど何故か魅入ってしまう。

ふたりそれぞれ生きづらさを抱えながら相手の為に何か出来るかもと考えて行動する。
いきなりやった事もないのに「散髪やります」とか「とりあえずそこで1人で怒ってて」とか、突拍子もないちょっと笑える言動も温かい。

周りの人達もみんな優しい。
意地の悪い人は1人も出て来ない。
山添の元上司もクリニックのカウンセラーも転職アドバイザーも自死遺族の会の人たちもみんな優しい。
藤沢が最初就職した会社の人たちも事情を知らないから戸惑っただけ。

そして何よりある意味ユートピアの様な栗田科学。
山添も藤沢もそこの人達の理解と暖かさに
支えられながら自分の居場所、これからを見つけていく。
ラストの山添「コンビニ行きますが何か買って来ますか?」
人との接触を極力避けていた山添が人の為に出来る事をごく自然に提案する。
こんなほんわかした職場ほんといいな。

上白石萌音、普段はおっとりして穏やかだがPMSの時期になるとどうしようもなく苛立ち怒ってしまう藤沢を好演。
その豹変ぶりが素晴らしい。
松村北斗、またいい若手俳優が出て来たなぁと思ってたらSixTONESのメンバーとは恥ずかしながら知らなかった。
あらま。
どうしても江口洋介の若い頃ではなく若い江口洋介に見えてしまう。

『夜明け前がいちばん暗い』
山添と藤沢はそのいちばん暗い時間を一緒に過ごす事によって明るい夜明けを迎える事が出来た。
そして夜明けを迎えた二人はそれぞれのこれからに驚くほどあっさりと進んでいく。
だけど心の中ではいつまでも同士なんだろうなぁ。

いい映画でした。

それと自分もこの登場人物たちの様な情緒を持たなければ。
Hara

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