むらむら

ポライト・ソサエティのむらむらのレビュー・感想・評価

ポライト・ソサエティ(2023年製作の映画)
5.0
イギリスを舞台にしたパキスタン移民のムスリム(イスラム教)一家が遭遇するサスペンスコメディ。日本での上映は未定。

スタントマンに憧れ、日々空手の稽古に励む女子高校生のリア。美大を休学して引きこもりがちの姉・リーナが大金持ちのイケメン若手遺伝子学者・サリムにパーティーで見初められ、最初は二人の仲を応援しようとするも、次第にサリムに違和感を感じるようになり、二人を別れさせようとするのだが……って話。

この主人公リアちゃんのキャラクターがとても良い。

「空中回し蹴り」を取得するのが夢で、かなりのシスコンだけど、家族でカンフー対決するのも厭わない武闘派。かと思うと学校ではキラキラ感ゼロ。同じスクールカースト最下層女子たちとウダウダする。

人生街道において非の打ち所のないキャラは遺伝子学者のサリムかもしれないが、俺の嫁キャラとして非の打ち所のないキャラは、リアちゃん、あなたです!

特に、遺伝子学者サリムの尻尾をつかもうと、フィットネスジムに男装して潜入するシーンとか最高。俺もフィットネスジムでリアちゃんを待ち受けていたかったぜ。

しかもフィットネスジムで待ち伏せするシーン。男装したリアちゃんが、待ち伏せ完了したときに、親友たちに伝える言葉が

「鷲は舞い降りた(The Eagle Has Landed)」

って、50年近く前に出版された冒険小説のタイトルやん。俺の大好きな小説やん!

他にも例えば、結婚して家庭に入ることを夢見るリーナに対して

「ジェーン・オースティンの小説みたいだね」

って、そんなん、フツーの女子高生が使う比喩ちゃうやろ!

※ジェーン・オースティンの「高慢と偏見」も、舞踏会で結婚相手を見定めるような場面が出てきます。

選曲の幅も俺好み。

60年代のオールディーズガールズバンド・シュレルズから、ケミカル・ブラザーズにKSHMR、果ては浅川マキの曲が、ほぼ丸々流れる。YouTubeに曲一覧あったので興味ある方は聴いてみてください。今日ケミカル・ブラザーズの東京公演やってるけど東京いなくて行けないのとても残念(自分語り)。

https://youtube.com/playlist?list=PLCFGxSI9MgKBhSvqMQSYhyF5YW7aGDQN_

リアちゃん以外での個人的MVPは遺伝子学者サリムの母親。観た人しか分からんと思うけど

「鈴木その子」と「アンドレ・ザ・ジャイアント」

を足したみたいな風格。何回か、フリートウッド・マックの「英吉利の薔薇」みたいに目をひん剥いた演技をしてて笑ってしまった。

全体的に演出はカオス。

リアが脱毛を強いられそうになるシーンでは急にホラー映画ふうになるし、ダンスシーンはアラビアみたいになるし、クライマックスは香港映画みたいなカンフーアクションになるし、中身を詰め込めるだけ詰め込んで、さらに伏線もちゃんと回収。これで90分はタイパ良すぎ。

最近の作品だと「エブエブ」とか「SISU」好きな人は絶対に気に入りそうな作品。ぜひ「応援上映」やってほしい。相当、盛り上がると思うよ!

俺もリアちゃんを応援しに、新宿二丁目のフィットネスジムのサウナから馳せ参じます!

(おしまい)
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