男女の出会いを仏教の輪廻転生をベースに「イニョン」🟰運命と捉えた、とてもアジアな映画です。
輪廻転生ゆえ、この映画の原題「past lives （前世）」となったと思われます。
とても情感に訴える映画で、余韻がとても良かったです。別れたくなかったけれど、いろいろ事情での別れを経験したことのある年代の人の心には響きます
前世に縁があった人たちで8000の層の縁が結ばれたら結婚すると、映画で語られます。
12歳で初恋に落ちた同級生の2人
24歳でネットでお互いを探し出し、コミュニケーションするもキャリアの確立を目指して別れる2人
36歳で再会するも、ナヨンはすでに結婚しており、ハエは結婚を迷っている
これらが情感豊かに映画で映し出されます。特に、画が美しいです。NYの風景、夜景、夫となるアーサーとナヨンが出会った場所、本当にそれぞれの場面の画角や情景の切り取り方が美しく、とても好みでした。
もちろん2人の再会を丁寧に描いた映画ですが、そこに見えるのは個人の中に生き続ける国のアイデンティティです
ナヨンは12歳で韓国ソウルからカナダに家族で移住しており、今はNY在住で、韓国語は母との会話でしか使わない状態です。
でも、ハエとの2回に渡る再会の中で、彼の中にある韓国的なものが、ナヨンの郷愁を刺激し、自分の中にあるアイデンティティとシンクロすることが、ハエに対する好意だけでなく、さらに関係を特別なものにしたと思いました。
夫アーサーに寝言は韓国語でしか喋らず、ナヨンのなかには自分の行きつけないところがあると言われてしまいます。そんなナヨンを理解しようと韓国語を覚える妻な想いのアーサーです。
これが国際結婚だと思います。昔、岸恵子さんのエッセイを読み、離婚のくだりで、「僕は君の中の日本に勝てない」と言ったニュアンスの文があったことを思い出しました。
あなたには来世で結ばれたい相手はいますか？
そんなことを思った良い映画でした。
