mmm

コット、はじまりの夏のmmmのネタバレレビュー・内容・結末

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

内容に触れているのでネタバレ設定しておきます。


ここのところ目にするもの耳にするもの
心が荒んでいたので、
いくつかの選択肢からこの作品を。

大家族の中で暮らすコット(9歳)は
家庭の事情で夏休みの間、
伯母夫婦の元に預けられることに…
そんなひと夏を追った作品

洋題が「The Quiet Girl」というとおり、
コットは非情に大人しい子供。

とにかく説明をしない作品でして
(そこがとてもいい)
直接的ではないのですが、
コットの実家での扱いが
あまりよくないといいますか…
父は仕事を疎かにしがち
そんな父(夫)を叱咤する母親
両親ともに気分屋で気性が荒い部分が目立ち
現代でいうところの毒親っぽさを感じます。
姉たちからも可愛がられていないようで
内気なだけでなく、子供ながらに色々と諦めて
しまったような雰囲気に、いたたまれない気持ちに。

預けられるのは、母親の姉夫婦なのですが、
伯父さんはシャイなのか、よそよそしく
伯母さんも言葉少なげ…
正直、ちょっとどうしようかと思ったくらいでしたが、
すぐに伯母さんの思慮深さを感じることになり一安心。

スローペースかつ言葉少ない中で、
家事の手伝いをしたりしながら
少しずつ心の距離が縮まっていく姿が
丁寧に描かれてました。

無言で差し出す内緒のビスケット
牛舎でのモップがけ競争
郵便物確認のタイムトライアル
お風呂の後の丁寧なブラッシング
静かで質素な食事の時間

車からコットが目にする景色や
門へと続く一本道に降り注ぐ陽の光

本当になんてことのない光景が
写真のように心に残っているというのが素晴らしい。

序盤から示唆されているのですが、
この夫婦の静かな日常には理由があり
それが自分達の子供(息子)を
不慮の事故で失ったことが次第に
明らかになっていきます。

このことも、お喋りなご近所さんにより
知ることとなり、心の傷が癒えることのない
本人達は相変わらず多くを語りませんが、
コットには十分伝わっている
んじゃないかと感じました。

夏休みの終わり。
互いに名残惜しい気持ちを抱えつつ
実家に帰ることになります。
相変わらず、勝手な実父や母を前に
このまま引き取りたいとは言わない伯母達
(あぁ頼む、うちに引き取りたいって
言ってくれないかな…という気持ちでいっぱい)

安易な感動物語にせず、現実的な視点で物語を紡ぎ、
ラストシーンまで、言葉に頼らないのが凄かった。

最後の方は、あちこちから
すすりなく声が聞こえたけど、
単なる感動じゃなくて、世知辛い現実の中で、
人のぬくもりに触れ成長したコットが
自分から起こした行動に対して
なんじゃないかと思ったのでありました。

もう同じ回を観てる人の半分くらいが、
子供や親せきをみているような
気持ちだったんじゃないかと。
(そして実父、まじで何も言うなと思った)

特別なことは起こらないけど、美しく強い作品でした。
mmm

mmm