クリーム

スナイパー コードネーム:レイブンのクリームのレビュー・感想・評価

3.8
実在のスナイパーの半生を描いていて、ウクライナの伝説的スナイパー、マイコラ·ボローニン氏が映画制作の脚本に参加していて、リアリティがあります。
そして本作は、ロシア·ウクライナ戦争から始まりますが、その戦争が現在に繋がっています。ウクライナのプロパガンダを感じる部分もありますが、それを差し引いても貴重な映画だと思います。

2014年ウクライナ。ロシア·ウクライナ戦争が始まり、妊娠中の妻を殺された物理学者のニコラは、平和主義者を辞め復讐に燃えウクライナ軍に入隊。過酷な訓練に耐え、エリート狙撃手へと成長します。そして、戦争が激化し、育ててくれた先輩狙撃手と共に狙撃手として戦い始めるのでした。



ネタバレ↓



今まで観て来た戦争映画とは、訓練や戦い方が違っていました。
まず、狙撃手達は、国境の草原等で、偽装網をつけ草むらに潜んでチャンスを待ち、敵を一撃で倒します。物陰や建物のからではない場面が多かったです。
勿論、狙撃手は基本教練、銃の分解・組み立て、ほふく訓練、射撃等の厳しい訓練をこなしますが、印象的だったのは、
·気配を見せてはならない。
·知恵と忍耐がいる。
·頭の中で素早く計算する。を徹底されます。弾が横をかすめても微動だしてはならないのです。草むらや砂地に潜むので…。
また、武器にも差があります。
ウクライナ軍の使用している弾の有効射程距離は400m。 NATO弾の有効射程距離800m。 ロシア軍弾の有効射程距離は、1,500~2,000m。 ロシアとの差が凄まじい。
よって、ウクライナ軍の狙撃手は、相手に気が付かれずに接近し、確実に相手を狙撃しなければ、殺されるのです。
主人公ミコラは、妻をロシア軍に殺され復讐に燃えますが、訓練の中で、仲間や先輩狙撃手との絆が出来ても、再び彼等を失います。そして、孤独を深めて行きます。スナイパーとして成長し、妻を殺した相手に復讐を果たしますが、2022年2月、ミコラは、ウクライナの首都キエフを襲うロシア兵狙撃作戦に参加しているシーンで幕を閉じます。

ラストが現在進行形で閉じられる幕切れに胸が締め付けられます。彼の戦いは、今も続いているのです。
地味ですが、現在進行形の戦争の側面を観る事の出来る今作は、勉強になるし、沢山の人に観て貰いたいと思いました。

映画の中で、霧の中進むシーンは、幻想的でとても美しかった。戦争との対比がとても悲しく思えました。
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