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怪物のnobiのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

ずーっと楽しみにしてた!期待しながら行ったけど、とても好きでした!

出てくる全員にたぶん対話が必要だった。真正面から対話するよりも、何気ない会話が人を救うことはあって、でもそれだけじゃ救われないものも確かにある。会話してると魔がさして明確に傷つけてしまったり、コントみたいに演じちゃったり、聞き逃しちゃうこともあるよな。そんな描き方に坂本裕二の"会話"や"人間"への愛を感じた。全員がバカ真面目にやった結果面白くなっちゃう愛おしさみたいな。

校長に詰め寄ったみたいに、湊の話を聞こうとしてくれていれば。様子がおかしくなってからも、おどけたシーン以外で目を合わせないまま、でも最大限できることをやろうとしているのも分かるし、きっと愛しあっていながら、すれ違ってゆく親子を見るのが歯痒かった。で、結局それはもう自分のためだけにやってんじゃん、って行動がバッドエンドを加速させる。弁護士立てるとか、謝罪会見とか。
個人的には、そもそも誰も完全には分かり合えないという前提で、腹割って話して理解しあおうとするしかないと思ってきたけれど、どうしても人には、というか大切な人だからこそ言えない・言いたくないことってあるよなあと思う。そういうことについて、自分も"理解してほしい"よりは"拒否されるのが怖い"が勝つことが多くて、アラサーになっても抱えるしか方法を知らない。
病院帰りのシーン、荒れた部屋。自分のなかに嫌いな弱さや汚さ、なにか得体の知れないものを見たときの破壊衝動、脊髄反射的に人を拒絶してしまうあの感覚、思い当たってむずむずした。あのエネルギーは思春期だけだ!

是枝作品は絵が綺麗で、セリフや物語じゃないところに心が動いて、ポッと言葉が浮かんでくることがある。廃電車の天窓の水玉を見て不意に、あー生きててよかったーと思って、噛み締めた。

あと、保利先生の歩き方や、けっこう好きであろう彼女に不気味と言われて笑う表情を見て恐れ入った。永山絢斗の報道に出したコメントを思い出す。もともと好きだけど、これはもう瑛太でてたら要チェックだな。
思い返せば、保利先生ぜんぜん普通じゃん、いい先生じゃん、普通になんか幸せじゃん、と思ったのは保利先生視点のターンだった。カップラーメン啜りながら自分の週刊誌の記事の誤植見つけてるとき、あれは誰にも否定されない彼にとっての(些細な)幸せの瞬間だったと思う。好きな歌詞の一節とこないだ観たJOKERを思い出した。私もああいう瞬間を積み重ねたい。
それで誰かの力を借りながら法螺貝みたいな音吹いて、狼煙をあげたい。
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