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To Leslie トゥ・レスリーのアー君のレビュー・感想・評価

To Leslie トゥ・レスリー(2022年製作の映画)
3.5
低予算の単館上映でありながらもアカデミー賞にノミネートされたが、オスカー候補として規約違反が疑われたことで、少し話題になっていたので気にはしていた映画である。

冒頭で宝くじが当選したインタビューから始まり、数年後にお金を使い果たして知人からお金を無心するカットは小気味よく物語の構成として入り込みやすく良くできていた。

奔放に生きる彼女の周辺との軋轢や新たな出会い、そして再生に向けた終焉は舞台がカラッとしたテキサスだからこそ人間味のあるドラマを上手に描いたのではないかと思う。

決して嫌がらせではなく彼女が自分の意思で改心するのを待っていたのかもしれない。そして仕事を懸命に探すよりも人を探さなければ元も子もないことを痛感する。

主演のアンドレア・ライズボローは女優として意識したのは「ナンシー」ぐらいから。主役なのかバイプレーヤーなのかポジションとして本人はかなり悩んでいたのかもしれない。実力はあっても世間的には過小評価であったため、この映画のレスリーと同様にチャンスをかけた感じはする。

こんなに都合の良い終わり方でいいのかなという疑問もなかったわけではないが、彼女の表現力の高い演技の素晴らしさで持っていった感じもする。また助演のモーテル経営者のスウィーニーや親友を演じたナンシーを演じたアリソン・ジャネイは数分ではあるが印象に残る演技をしておりドラマを盛り上げた。

話は横道に逸れるが、アルコール嗜癖(しへき)の問題を映画として取り扱っているが、経験談として家族である周辺の気持ちを代弁すれば、この程度ではただのほろ酔いレベル。本当の地獄というのは当事者も周りの家族も血を見ることもある。支援対策として3世代ぐらいの家系図をジェノグラムとして表記をした専門的な指導が必要となる。

[角川シネマ有楽町 10:30〜]
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