王冠と崑敏

梟ーフクロウーの王冠と崑敏のネタバレレビュー・内容・結末

梟ーフクロウー(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

鑑賞日の3/3は…耳の日。
フクロウとミミズクは共に、フクロウ目フクロウ科に属していて、見た目の違いは、ミミのように見える羽角があるのがミミズク、無いのがフクロウ。ですが、例外もあり、羽角のあるフクロウもいるし羽角の無いミミズクもいるそうです。『ズク』が日本の古語でフクロウを表し、ミミズクは耳のあるフクロウを意味するそうです。因みに、羽角が何故あるのかは明確にはなっていないそうです。
また、夜盲症の事を鳥目と言ったりしますが、鳥類のフクロウは、自然界で類まれな能力を持つ鳥類です。
・首が左右に270度ずつ回転する。
・音を出さずに飛翔出来る。
・パラボラアンテナのように音を立体的に集音する聴覚を持つ。
中でも、暗闇を見通す「夜目」は驚異的です。
何故そんな事が出来るのかですが、フクロウの目の中のDNAが暗闇での視力を高めるように配置されているそうです。そのあり方は、夜行性の霊長類に見られるものと近似しているとのことです。

さて。

全然事前情報を入れずに観に行ったので、藤枝梅安のような晴らせぬ恨みを晴らしてくれる闇稼業のダークヒーローを描くようなストーリーなのか?とメインビジュアルを観た時点では勝手に想像していたのですが、始まると…
韓国歴史版グッドドクターだと理解しました。いや、正確には、そもそもグッドドクターは韓国のドラマが元ネタで、その後日米でリメイクされたのですから、韓国歴史宮廷ドラマ+韓流お家芸のハンディキャップもののハイブリッド作品でした。

典型的な3幕構成で、1幕目は時代背景、主人公の置かれた環境、目的、映画のテーマが粛々と説明されていきます。身分の卑しいものは、余計な言葉を発せず、観て見ぬ振りをしないと生きられない。とギョンスの口から語られるテーマ。それをどう乗り越えるのか?ラストにつながってきます。

それでも、針治療の腕を買われて宮廷入りしたギョンスは、持病の弟の為に、盲目というハンディキャップをものともせず、先輩からの嫌がらせもなんのその、課題をクリアして周りからの信頼を得ていきます。実は完全な盲目ではなく暗闇なら見通せることを周りに隠しつつ。

清に人質として出向いていた国王・仁祖の息子、昭顕世子が帰国して、その治療中にギョンスは世子に秘密に気付かれ、万事休すかと思いきや、貴重な拡大鏡を貰い、信頼を得て前途洋々。弟の病気の治療代も見通しが付いて、中盤のピークへ。中盤にピークが来たら、そこから一気に転落し全てを失うのが映画の基本的な型。世子が暗殺され、ギョンスが実行犯と疑われる最悪の展開。2幕目は、
どうなる?
どうする?
というドキドキワクワクの展開が見所です。

3幕目。史実の裏にあったかも知れない?フィクションなので、ハリウッド映画のように観客の期待に添う大逆転は起きませんので、折角苦労して国王に左手で文字まで書かせたのに、ちょっと結末が弱いかな?強引かな?と感じてしまいますが、それまで、口を噤んでいたギョンスが、暗闇の中でしか羽ばたけなかった梟が、朝日の中で、自分の命を顧みず、全てを告発するシーンは感動を覚えます。

最終的に、時間はかかりましたが、仕掛人・藤枝梅安してましたね(^_-)
王冠と崑敏

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