オーウェン

マニトウのオーウェンのレビュー・感想・評価

マニトウ(1978年製作の映画)
4.0
この映画「マニトウ」は、B級ホラー映画だが見せ場が多く、ワクワクする楽しさに満ちた異色作だ。

この映画の題名の「マニトウ」というのは、インディアンの言葉で精霊という事らしいのですが、この映画の場合は、"呪術師の悪霊"の事を指しています。

四百年前に死んだ"ミスカマカス"というインディアンの霊が、サンフランシスコに住む若い女性(スーザン・ストラスバーグ)の体を借りて、現代に再生しようとします。

この女性の首すじに出来たおできが、みるみるうちに大きくなり、その中に何か胎児のようなものがいるというので、主治医は頭を抱え込んでしまいます。

なにしろメスで切開しようとすると、その医師の手が意志に反して、自分の左手首を切ってしまうし、レーザーを使おうとすれば、機械が勝手に動いて、手術室を滅茶苦茶にしてしまうというように、とにかく破天荒でとんでもない展開になっていきます。

この映画の監督、脚本のウィリアム・ガードラーは、この映画の完成直後に、29歳の若さで事故死してしまったそうですが、これも何かこの映画の祟りではないかと当時、真面目に語られていたというエピソードが残っています。

このウィリアム・ガードラー監督は、この映画を撮る前に、「アニマル大戦争」や「グリズリー」などの恐怖映画を撮っていて、よほどこの手の恐怖映画が好きだったのだろうと思います。

映画のストーリーを運ぶ場面の演出は未熟な感じがしますが、しかし、恐怖シーンの演出はホラー映画ファンが見たがりそうなものを、これでもか、これでもかと一所懸命に見せようとしているところは、おーやってる、やってるという感じがして、非常に好感が持てます。

"ミスカマカス"が呼び起こした北風の霊が、病院内部を吹き荒れて、ナースの首がちぎれ飛ぶところのはったりの効いた演出は、恐怖を通り越して思わず笑ってしまうほど、観ていて微笑ましいくらいです。

若い女性役のスーザン・ストラスバーグは、かのアクターズ・スタジオの創設者の一人で、メソッド演技の指導者として有名なリー・ストラスバーグの娘さんで、この映画では文字通り、体当たりの熱演を披露しています。

この女性には、往年の人気スターで「お熱いのがお好き」や「手錠のままの脱獄」で有名なトニー・カーティスの恋人がいて、中年の女性客を専門に、タロウ・カードのインチキ占い師をやっていますが、これがまた、トニー・カーティスのどこか女たらしで安っぽい感じのキャラクターが、この役にぴったりのはまり役で、それを嬉々として演じている姿は、我々映画ファンを大いに楽しませてくれます。

この調子のいい男が、恋人の危機にだんだん真剣になって来て、悪霊と戦う気になっていくというプロセスが、この映画の見どころの一つにもなっています。

トニー・カーティスのインチキ占い師は、旧知の女霊媒師のステラ・スティーヴンスの助けを借りて、悪霊の正体を突き止め、現役のインディアン呪術師のマイケル・アンサラを病院へ連れて行って、"ミスカマカス"を霊界へ追い返そうとします。
しかし、これがうまくいかなくて、背中一杯に膨れた瘤から、ぬめぬめと肌を光らせた不気味な悪霊が誕生して来ます。

この悪霊の魔力で、廊下が氷詰めになるあたりのセットは実にチャチで笑ってしまいますが、大トカゲに化身したりの大サービスで、お話自体はだんだん馬鹿々々しく、しかし、俄然、面白くなって来ます。

どんな物にも霊があるから、病院中のコンピュータを総動員して、そのエネルギーで悪霊を倒そうという事になります。
そして、最後には何と、宇宙空間に飛び出した四百年前のインディアンの霊と、コンピュータの霊との対決になるという、もうとにかく、何が何でも話を盛り上げようとする精神に満ち溢れていて、特殊撮影が少々お粗末でも、大目に見てやりたくなってしまう程の不思議なエネルギーがこの映画にはあります。
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