むらむら

フェイブルマンズのむらむらのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
5.0
【悩み】息子が映画にハマってしまい心配です【相談】

(ペンネーム:ベーグルマン)

こんにちは。悩みがあってお手紙しました。

私はアリゾナでエンジニアをしています。

妻と、息子、三人の娘に恵まれて、コンピューターの開発でも良い給料を頂いている、自分で言うのもなんですが、理系の勝ち組です。私が忙しいので、妻と子供の世話は、仕事の出来ない無能な後輩に任せています。

こんな幸せな私にも一つだけ心配事があります。

それは、息子のことです。

息子に映画の仕組みを説明しようと、「史上最大のショウ」という映画に連れていったんですね。

そうしたら、私の「映画がどうやって動いて見えるか」という有り難い説明をしたのに無視して、列車が衝突するシーンに釘付けだったんです。

家に帰っても、鉄道模型を衝突させて遊ぶので、このままだと「鉄オタ」になるんじゃないかという懸念もあり、カメラを買い与えました。

そしたら、今度は撮影にハマってしまったらしくて……気付いたら、娘二人にミイラの格好させて撮影してたりして、勉強そっちのけなんですよ。

さらに、ジョン・フォード監督の「リバティ・バランスを射った男」を観に行ったら、友達を引き連れて西部劇やら戦争映画やら撮り始める始末。

妻に相談しようにも、妻は自分の世界に夢中で、いきなり踊りだしたり歌いだしたりピアノ弾きだしたりするばかり。仕方ないので、無能な後輩に世話を任せています。

さらには、妻の親戚らしきオッサンが、初対面の癖に息子に滔々と映画の魅力を語り上げたらしく、息子が感化されまくって……「あんた誰ですか?」って言いたくなりましたよ。

実は私、条件の良い仕事が決まったので、無能な後輩を除いた一家全員で、近日中にカリフォルニアの借家に引っ越す予定です。

カリフォルニアは、陽気な陽キャが多いから、息子が高校でイジメられないか心配なんですよね。

しかも、ハリウッドもあるというじゃないですか。

ハリウッドといえば、毎日ドラッグパーティー三昧で、「パーティーに象を手配しろ」といった無茶苦茶なバイトをさせられるそうなので、息子がハリウッドに行きたいとか見当違いな進路を選ばないかと心配で心配でお手紙しました。

息子をどうしたら更生させられるのか、むらむら先生のご意見を伺いたいです。



【むらむら先生からのお答え】

ベーグルマンさん、お手紙ありがとうございます。

一言で言うと、息子さんのことは、心配しなくても良い、というのが、先生の意見です。

「列車事故の映画を観て、カメラを与えたら、映画を撮るようになった」

なんて、可愛げがあるじゃないですか。息子さん、一歩間違えたら、「鉄オタ」の中でも悪名高い「撮り鉄」になってたところですよ。

息子さんが「シュッポシュッポ」言いながらベーグルマンさんに近付いてこないだけでも、幸運だったと思った方が良いです。

そもそも、息子さんに見せる最初の映画として「史上最大のショウ」を選ぶベーグルマンさんは、素晴らしいですね。

先生が子供の頃は「史上最大のショウ」と言うのは、別府・杉乃井温泉の演歌ショーだと思っていましたので、正直、息子さんが迫力ある映画を観て、人生変えられたことが羨ましいです。

先生みたいに、小さい頃に「寅さん」ばかり観せられていたら、今頃、息子さんも、ステテコを履いて腹巻き姿でバナナの叩き売りをしていたかもしれません。つくづく、息子さんは、お父さんであるベーグルマンさんに感謝してほしいです。

戦争映画の撮影に付き合ってくれるお友達がいるのも羨ましいです。

先生なんて、友達と戦争ごっこをするときは、完全にマトでしたから。

四方八方から銀玉鉄砲でイジメっ子たちに狙い撃ちにされた子供の頃を、昨日のことのように思い出します。リアル「四面楚歌」でしたね。

おっと、先生の話はこれくらいにしましょうか。

カリフォルニアでの生活が心配ということでしたね。

確かに、カリフォルニアは陽キャな学生ばかりなので、息子さんもアメフト野郎に殴られたり、マッチョの専属カメラマンとして仕えさせられたりすることもあるかもしれません。

ですが、逆にそんな合間に、ラッキースケベのチャンスもあるかもしれません。夢のカリフォルニアですから。

例えば、卒業パーティーの「プロム」。うまく行けば、ここで学校中のハートを掴むことが出来るかもしれませんよ。

ちなみに「プロム」といえば、先日亡くなられたバート・バカラックさん作曲「Walk on by」という曲がよく歌われるので、もしかしたら息子さんの「プロム」でも、歌われてるかもしれません。

余談ですが、ベーグルマンさんのお手紙にもあった「リバティ・バランスを射った男」のテーマソングもバート・バカラックさんが作曲しています。

あらら、また話がズレてしまいました。とにかく、先生としては、息子さんはそれほど心配する必要ないというのが結論です。

ハリウッドで、パーティーに象を呼んだり、地下の秘密クラブに人相の悪いスパイダーマンみたいな人がいたのは、トーキー以前の話です。いまだと、息子さんも、良いテレビスタジオに潜り込んで、有名人に会えるようなチャンスが来るかもしれませんよ。

ベーグルマンさんは、ベーグルがマルチバースと関係があるという説を聞いたことがありますか?

もしかしたら、マルチバースの世界では、ベーグルマンさんも、映画俳優として、バットマンにナゾナゾを出してばかりのマスク男とか、死体のオナラで海を渡る男とか、そういう変な役を演じているかもしれません。

なので、一概に、息子さんが映画の道に進むことを、否定する必要がないと思います。

そして、息子さんが映画監督になったら、何十年も先に、ベーグルマンさんのことを題材に、映画を作ってみようとするかもしれません。

もしかしたらその作品は、ジャンプの打ち切り漫画の

「俺たちの映画人生はこれからだ!」

という台詞みたいに、「これから映画界で活躍するぞ!」というところで、寸止めで終わってしまうかもしれません。

そんな息子さんに、ベーグルマンさんも

「続編を作ってほしい」

と言い伝えておいてくれないでしょうか。

長くなりましたが、ここまで読んで頂きありがとうございます。

水平線とチンポジは常にイジっておいたほうが良いと考えるむらむらがお送りしました。

追伸:ベーグルマンさんの後輩に対する上から目線がとても気になりました。もう少し、後輩のことを思いやってあげないと、大変なことになるかもしれませんよ。

(おしまい)
むらむら

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