むらむら

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらないのむらむらのレビュー・感想・評価

5.0
タイトルで既に物語の最大の目的を教えてくれる、親切設計な日本発のループもの。

「ループ映画が三度の飯より好き」
「ループ映画が好きすぎて、他人との会話もループしがち」
「映画でオッパイが出てきたら、手動でループ再生してしまう」

といった性格の俺にとっては、飛んで火にいる夏の虫……ならぬ、鳩が窓に飛び込んでくるみたいなド真ん中の作品だったので、当然の如く鑑賞。

部長以下7名が働くこのデザイン会社、実は、毎週1週間が終わるたびに、月曜日に戻っていたのだ。そのことに気付いた社員たちは、なんとかこの終わり無きループを抜け出そうとするが……という話。

作中でも映画マニアの新人社員が「恋はデジャ・ブ」や「オール・ユー・ニード・イズ・キル」、「ハッピー・デス・ディ」に言及してるように、過去の作品をきっちり踏襲して、オリジナリティを出してて、凄いなー、ってのが第一印象。ループ警察の俺もニッコリ満足。

具体的に、「オリジナリティを出してる」って思った設定は3つ。

1.一週間単位でのループ

ループもの、「同じ一日を繰り返す」とか「死んだらある時点に戻る」って設定が多く、変奏曲としては「8分間を繰り返す」「ミッション:8ミニッツ」みたいなスリラー作品もあるが、この作品のように一週間を繰り返すってのは珍しい。

2.主人公以外もループに気付き始める

たいていのループものは主人公だけがループに気付き、経験を積むというのがセオリー。「明日への地図を探して」みたいにカップルで気付いてる例もあるが、多くはない。この作品では、「とあるサイン」で、全員、自分がループしてることを思い出す、という設定になってて、如何にこの「とあるサイン」を職場の皆で共有するかが、前半のキモになってて、サスペンスを盛り上げてくれる。

3.あまりに日本的な登場人物たち

一番感心したのがこの部分。ループに巻き込まれた主人公たちは、ループから抜け出すために、会社員ならではのチームワークで乗り切ろうとする。その姿が実に日本人的で面白い。しかもせいぜいループに気付いて20回くらいで、ループ抜け出すために協力して頑張ろうとするの凄くない? 「パーム・スプリングス」の主人公なんて、1万回くらいボンヤリしてたよ? 

俺、以前ループに巻き込まれたら「ツタヤでAV借りまくる」って書いたことあるが、この作品の登場人物たち、「遊んでて、急にループ終わったら困るし……」って、毎回ちゃんと会社来て仕事してるの社畜すぎて偉い。

そして、これらオリジナルな設定を上回るこの作品の魅力が、マキタスポーツさん。

マキタスポーツさんは、漫画好きなハゲの仕事できなそうな部長を演じてる。これが、こんな滅茶苦茶な設定なのに、「うわー、こういうオヤジくさい人いるー!」って誰にでも思わせる絶妙な存在感。

「MONDAYS」の「M」は、「マキタスポーツ」のMなんじゃないの? って監督に聞きたくなった。

そして、この部長の内面が、次第にあらわになっていく構成も凄い。

よくある作品だと、ここに家族や子供の問題とか絡めてくるんだけど、くたびれた中年オッサンが出てきたら、家族とか子供に虐げられてる、って使い古された設定を安易にループさせてる日本映画は死ねばいいと思ってる俺なので、この作品でのマキタスポーツさんのキャラクターの芯の通った設定には共感しかなかった。

「MONDAYS」ってタイトルは、ローマ字読みすると「モンダイ」ズ。

ネタバレしないよう詳述は避けるが、82分の上映時間で、すべてのモンダイが解決し、登場人物が成長する。設定は突飛だけど、よく出来た作品だなー、と思いました。

こんな理由でループしてたら、世の中大変なことになってるよね……。ま、それはそれで楽しいか。

余談:昨日土曜日は渋谷でこの作品を観て、横浜に移動。執行猶予明けたミュージシャンのライブを鑑賞。ほぼノンストップのビートと飛び交うレーザーがループするライブ。ループゾンビは居なかったけど、妖怪と富士山はいたかな。素晴らしいライブで、とても心地よい二時間を過ごして、大満足で帰途に付きました。

昨日みたいな一日ならループしてみたいなぁ。

(おしまい)
むらむら

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