HAYATO

ペパーミント・キャンディー 4KレストアのHAYATOのレビュー・感想・評価

3.9
2024年121本目
巨匠・イ・チャンドン監督が手がけた韓国映画史に残る傑作
1999年、春。仕事も家族も失い絶望の淵にいるキム・ヨンホは、旧友たちとのピクニックに場違いな格好で現れる。そこは、20年前に初恋の女性・スニムと訪れた場所だった。線路の上に立ったヨンホが向かってくる列車に向かって「もう一度、帰りたい!」と叫ぶと、彼の人生が巻き戻されていく。自ら崩壊させてしまった妻・ホンジャとの生活、互いに惹かれ合いながらも結ばれなかったスニムへの愛、兵士として遭遇した光州事件。そしてヨンホの記憶の旅は、人生が最も美しく純粋だった20年前にたどり着く。
主演を務めるのは、チェ・ミンシク、ソン・ガンホと共に2000年代の韓国映画界を席巻したソル・ギョング。『お嬢さん』のムン・ソリ、『梨泰院クラス』のキム・ヨジンらが共演。
韓国で50万人以上を動員する大ヒットを記録した本作は、同国のアカデミー賞といわれる大鐘賞映画祭で最優秀作品賞を含む主要5部門を受賞し、批評家からも大絶賛を受けた。1998年の韓国の文化開放後、両国が最初に取り組んだ作品でもあり、韓国とNHKが共同で制作した。
仕事も家族も失って絶望の淵に立たされた男が列車に飛び込む場面に始まり、彼がそこに至るまでの20年間が7つのエピソードに分かれて描かれる。7つのエピソードは、『メメント』に通じる時系列を逆行する手法がとられ、エピソード間は、走行している列車の最後尾から撮影した線路の情景を逆再生した映像で繋がれている。
過去に戻れば戻るほどヨンホが純粋で幸せであったことがわかり、人生の選択がその後の人生や人格に与える影響の大きさを残酷なまでに示している。
激動の時代に生きたヨンホ。大切なものを失い、自責の念に苦しめられ、破滅に向かう様は、あまりにも悲しい。
ラストシーンのヨンホの涙に、苦しい人生にも幸せな瞬間があったという微かな希望を見た。
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