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窓辺にてのmanamiのレビュー・感想・評価

窓辺にて(2022年製作の映画)
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徹底的に「静」に徹したカメラワークで延々と会話が続く。そのほとんどが1対1、ひたすら長回し。これぞ今泉力哉監督と舌を巻く。
現役高校生の小説家・久保留亜は、文学賞受賞の会見で自身の作品について無理解な質問をしてくる記者を言い負かすような、勝ち気で大人びたところのある少女。一方で金髪彼氏とたわいもないことで口げんかしたり、公園ではしゃいだりする面もある役を、玉城ティナが好演している。
彼女と深く関わっていく主人公が「フリーの物書き」の市川茂巳(稲垣吾郎)。仕事はそれなりにできるっぽいのにプライベートでは悩みを抱えている、こじらせおじさん。「ショックを受けなかったことがショック」ものすごく分かるよ〜、共感しまくりだよ〜。
ただし「他人事」は「たにんごと」ではなく、「ひとごと」と読みますよ。文章に関わる職に就いてる人物とは思えない、初歩的ミス。ゆきのに追い出されて、それだけ動揺してたんだと思うことにします。
ついでに他のツッコミポイントさくっと3選。1.ラブホの窓ってあんなに全開にならないよね。2.別れ話5時間はキツい。3.ゆきの最恐説。
それにしても浮気されてるって相談を、浮気してる・されてる夫婦にするの、ややこしくてこんがらがるよな。そしてあっちもこっちも浮気しすぎじゃね?w
タクシー運転手「おもしろのたっちゃん」こと滝田みずうみさんの競馬トークからの自虐オチなんなん、テッパンネタなんかな。そんでもって時間もお金も同時に失える贅沢、実際にやってみちゃうのね、真面目か!!
金髪彼氏の書評は笑ってしまう。ほんと良い子なんだな。「え〜マジか」の言い方リアルだわ〜。それに「無駄を大切にね」の石とか、光の指輪とか、喫茶店のパフェの使い方、上手いな〜。
平板で淡白でちっともワクワクなんかしないのに、なんでこんなにもずっと観てられるのか。善人じゃない人たちの人間味溢れるもがき方から、窓辺に差し込む光のような「温(ぬる)み」をもらえる作品。

77(1786)
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