革芸之介

喜劇 特出しヒモ天国の革芸之介のレビュー・感想・評価

喜劇 特出しヒモ天国(1975年製作の映画)
4.5
本気で泣いた。大笑いする気満々で観たけど泣けるんだよなぁ。松竹出身で喜劇の名手、森崎東がなんと東映で撮ったレアな異色作。東映の猥雑なエロスのパワーと松竹流の人情喜劇の奇跡的なマッシュアップ。


冒頭からファンキー。タイトルバックにジャズファンク調の音楽が流れ、怪しすぎる坊さん役の殿山泰司の説法が重なり、池玲子が出し惜しみなく豊満な肉体を披露。ストリッパーとそのマネージャーであるヒモ男達の熱すぎる生き様が画面から大いに伝わってくる。

今回はシネマヴェーラの芹明香特集での上映だったので、芹明香が素晴らしいのは当たり前で、ノーメイクのアル中演技が凄すぎ。なんか危ないお薬を注入してるんじゃないかって心配になるほど迫真の演技。山城新伍や池玲子の主役格以外も面白い。川谷拓三は叫び、殴られ、吹っ飛ぶいつものドM演技をさらに進化させているし、川地民夫のコスプレ七変化、藤原釜足のぽっちゃり女性へのストリップ指導シーンがシュール過ぎるし、ズボン脱がされてヨボヨボのパンツ一丁姿を大胆に披露。絵沢萌子もしっかりとヒール役をこなす。

登場人物全員キャラ立ちしてるけど、聾唖者である下条アトムと妻のエピソードは本当に泣いた。「バラが咲いた」の音楽が流れる中、耳の聞こえない妻がストリップの練習をするシーン。「1、2、3、パァ!」のタイミングで腰かがめて股開く猛特訓。健気に頑張る姿に下条アトムも池玲子も山城新伍も俺も感動。
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