むらむら

聖地には蜘蛛が巣を張るのむらむらのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
5.0
開始1分で若い娼婦のオッパイが出てきて「うぉぉぉぉぉ!」と盛り上がったのも束の間、どんどん鬱展開に陥っていく、イランを舞台にしたスリラー。

舞台は2001年。イランの聖地マシュハドでは、娼婦ばかりを狙う連続殺人鬼「スパイダーキラー」が、10人をその毒牙に掛けていた。女性ジャーナリストのラヒミは、この「スパイダーキラー」を追う。

最近毎回書いてる気がするが、この作品でもラヒミがゲロ吐くシーンがあった。今年、劇場で観た映画で、ゲロが出てきたの8本目なんですけど!? もはや、映画観に来てるのかゲロ観に来てるのか解らない2023年なんですけど!? ……そろそろ映倫は、「R15」とか「R15」に加えて「Rゲロ」を導入することを本気で検討してほしい。

まぁそれはいいとして、この連続殺人鬼「スパイダーキラー」の正体、観客に対して早々に明らかになる。

その正体は、イラン・イラク戦争の帰還兵で、妻と子供二人を育てる真面目な父親・サイード。

娼婦を自宅に連れ込んでは、絞め殺すサイード。この描写の連続。ゲロもキツイけど、この描写もキツい。

しかも、このザイード。死体を放置したまま、帰宅した奥さんとセックスしたりして、かなり脇が甘いんだよね。娼婦をナンパするときもフツーに顔出ししてるし。なんでこんなにガバガバな犯行なのに、全く捕まらないの? 警察、女性記者のラヒミの尻ばかり追いかけすぎじゃない? もしかして、警察全員、韓国警察からの出向なんじゃないの?

とはいえ、そんなラヒミの側もガバガバ。

ラヒミたちは、「スパイダーキラー」を捕獲するために、囮捜査を実行するのね。娼婦に扮したラヒミが、運良く「スパイダーキラー」に声をかけられて、二人でスクーターに乗って去っていくところを、同僚の記者のオッサンが車で追いかけ、現場を押さえる、という作戦なのだが。

「あー……見失ってしまった……」

と、追跡して1分で、「スパイダーキラー」とラヒミを見失う同僚の記者のオッサン。

あんた、ラヒミの命がかかってんのに、あまりにガバガバ過ぎない??

運良くラヒミは「スパイダーキラー」から逃げおおせて、そのあと新聞記者のオッサンはフツーにラヒミと仕事してたけど、ラヒミは内心、ブチ切れだったと思うわ。

さて、この話、「スパイダーキラー」が逮捕されたところで終わらず、その後の法廷闘争へと雪崩れ込む。イランならではの、娼婦や女性に対する差別、政治的な駆け引きなど、この終盤は、胸糞悪いけど見ごたえはあった。

フォローしている「くらげ」さんのレビューによると、犯人や家族の主張は、ほぼ事実に基づいているらしい。こちらに、実際のインタビューがあるので貼っておきます。

https://youtu.be/1Bj6IkrKsgw 

この監督、HBOmaxのドラマ「ラスト・オブ・アス」も一部監督してるらしいけど、すっごい良く分かる。鬱展開、めっちゃ得意そうだもんなぁ。鬱展開の極まった「ラスト・オブ・アス2」でも嬉々として監督やりそうな気がする。いやー、俺、この監督と酒を酌み交わしたら、確実に喧嘩になる自信あるわ。

というわけで、「後味の悪い映画が観たい!」という人には★5の作品でした。

俺がプロデューサーだったら、冒頭の娼婦のオッパイシーンだけが延々と映る2時間の映画にしてあげたいです!

(おしまい)
むらむら

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