椿本力三郎

トリとロキタの椿本力三郎のレビュー・感想・評価

トリとロキタ(2022年製作の映画)
3.7
カメラワークにせよ、役者の演技にせよ、
ドキュメンタリーかと思うほど
自然体で、だからこそ残酷だった。

確かに不法移民であり、
姉(ロキタ)と弟(トリ)の関係も偽りではあるが、
ビザがない、ビザが欲しいというだけで
ここまで追い込まれないといけないのか。

移民同士の足の引っ張り合いもまた「残酷な現実」の1つなのだろう。

最初から最後まで希望や明るさが1つもなく、
ロキタもトリもただひたすらにどん詰まりの中でクルクル回っている。
映画的な演出は一切前に出さない、
淡々とした静けさが彼らの置かれた過酷さを際立たせる。
ロキタにとって、トリこそが希望であったのだろう。
そしてトリはそれを感じ取っていた。
ラストシーンの余韻が深い。