むらむら

別れる決心のむらむらのレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
5.0
山頂から初老の男が転落した事件を追う刑事が、中国人である若い妻・ソレに殺人の疑いを抱くも、次第に心惹かれていく……という話。

あまりネタバレしないで観た方が良い作品なので、話の紹介はここまで。

「クムジャさん」「お嬢さん」のパク・チャヌク監督にしては、おどろおどろしい過去作に比ると、若干というかかなり火曜サスペンスになった感はあるが、「未解決事件」に拘る刑事の想いが、予想外のラストに帰結する構成は流石。特に

「悲しみが波のように押し寄せる人もいれば、水にインクが広がるようにゆっくり染まる人もいる」

という台詞が印象的。この台詞に限らず、小さなシーンにも数々の隠喩や寓話が仕掛けられていて、観たあとにかなり余韻を残す出来だった。

それはさておき、この刑事、若くして昇進したという設定の割に捜査方針はグダグタ。

捜査って言いながら、やってることは、ほぼ中国人妻ソレのストーカーだし。韓国映画における警察はたいてい無能だが、こんなスチャラカ刑事が出世頭な時点で、韓国警察って相当、ポンコツに思われてるんだろうなぁ、と実感させられる。申し訳ないが、この事件、コナンくんなら秒で解決してると思うわ。

それに比べて、中国人妻ソレのなんと有能なこと。山に登るわ穴は掘るわ密航はするわ、もはや何でも屋かよ、って言いたくなるくらいの活躍っぷり。刑事も中国人妻ソレのケツばっかり追いかけてないで、ソレを見習って頑張ってほしい。

それと、初老の男が転落した山。山というより屹立した岩。例えて言うなら、映画「メッセージ」に出てきたバカウケ形状の宇宙船に酷似してる。

しかも名前が

「クソ山」

……これも何かの隠喩? 中学生がフザケて名付けたようにしか考えが及ばないが、何でこんな脱力させる名前なの?

この「クソ山」が特に前半の台詞で頻繁に出てきて、どうしても物語に集中できなかった。字幕で観るだけでこんなにインパクト強いのだが、吹替版だとどうだったのだろうか。「警部! クソ山です!」とか、声優の良い声で何度も繰り返されてたのだろうか。とても気になる。

加えて、後半に出てくるイケオジ登場人物が、刑事夫妻と中国人妻ソレに向かって、初対面の挨拶で言う台詞。

「私の仕事はアナリストです。アナル(肛門)リストじゃないですよフフフ」

……って中学生かよ! 俺アナリストではないが、初対面でこんなギャグかます神経を疑ってしまう。それとも、韓国ではこんな挨拶が許されるってこと? 俺アナリストではないですけど、俺もいますぐ韓国行っていいですかね?

というわけで、唐突な「クソ山」と「アナリスト」の出現に、パク・チャヌク監督の性癖を見せつけられる俺なのであった。

最後に、観た人にしか分からんと思うので書くが、終盤近くのとあるシーンで、俺なら、竹に穴を空けて忍者みたいにスーハースーハーするのにな……。

(おしまい)
むらむら

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