とにかく映像美に全振り。
ウォン・カーウァイらしさが炸裂している。
グリーンとオレンジを差し色とした画が、接写や斜め画角の多用でより印象的に。それらをカット割の連続で乱打し、唯一無二の疾走感を発生させる。特に冒頭10分間「ああ、これがやりたかったんだな」とフォロワー作品がちらほら思い浮かぶほど。(『ラブ&ポップ』『チワワちゃん』とか。もしかしたら湯浅政明さんも?)
その後もモノクロだったり、アナログ調の映像といった演出も加わり抑揚も発生し非常に没入感が高い。
北野武監督の言葉を借りれば「どこを切り取っても額に飾れるような映画」とはまさにこれといった感じ。
映像美にこだわりすぎるあまり中身がないという意見もまあわかる。フィルモグラフィーで比較しても『花様年華』や『マイ・ブルーベリー・ナイツ』の方が物語としてプロットはしっかりしてる。『恋する惑星』のキャラもかなりエキセントリックだが、今作に比較するとまだ共感することがギリ可能。今作はプロットもあってないようなものだし、(特に金城武さん)キャラの行動も不条理すぎてよくわからない。
でも個人的にはそれでよい。ウォン・カーウァイ作品に求めているのはスタイリッシュへの眼福であり、他の作家では代用できないものがある。特に今作はその作家性が傑出している。
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・ミッシェルリーの色気がとんでもなかった。『真夜中まで』で真田広之さんと逃避行している姿はどちらかというとキュート寄りだったが、今作はとにかくエロい。
・「部屋を掃除する」「お店を開く」「撮影をする」などの行動になにかしらのメタファーを読み取ることもできそうだが、面倒でやめてしまった。なんか無理に解釈しなくてもいいかなと思わせてくれる。
・前述したフォロワー作品で真っ先に思い浮かんだのは『スワロウテイル』。でも時系列を調べてみるとほぼ同時期だったことが発覚。「こ、これは!」となんかひとりで夜中にアホみたいに興奮してしまった。