お腹すいた

線は、僕を描くのお腹すいたのレビュー・感想・評価

線は、僕を描く(2022年製作の映画)
5.0
どうにもならない、どうにも出来ない過去を1人抱えてる霜介の事を私は理解できる気がする。私も傷つけた末に家族をなくしているので。

映像や音がとにかくよくて、一見すると画面は穏やかだけど登場人物の心情は実はそうではなくて、水墨画がそれを代わりに語ってる気がした。

水墨画って、正直単に墨で線を描いてるだけじゃん、モノクロじゃん、フランダースの犬ではネロはお金がなくてカラーの絵の具が描けなくてモノクロ線画を出したらカラーじゃないと落選なのに水墨画は黒白で良いんだ、とか、この映画を見始めた時はそんな風に思ってたけど、話が進むにつれて墨の濃淡、明暗で鮮やかに風景や静物が描かれ、とにかく水墨画の世界にどっぷりハマった。実物を見に行きたいと思ったし、映画が始まる前まではそんなの自分にだって描けるよと思ってた部分があるけど映画を見始めたらそんな風には全く思えなくなって、自分にも描けるだろうか、描けるわけがないけどでもなんだかやってみたい、とそんな気持ちになった。

ずっともがき続けてる霜介の長い旅は線を描き続ける事でひとつのゴールに辿り着いた。私もいつかこの長い旅が終わるといいなあなんて、思った。