本好きなおじぃ

月の満ち欠けの本好きなおじぃのレビュー・感想・評価

月の満ち欠け(2022年製作の映画)
4.1
会社員の小山内は、妻の梢にぞっこん。娘の瑠璃も可愛く、まさに仲睦まじい3人家族。ところが、2人は一気に、交通事故で帰らぬ人になってしまう。
それから6年が経ち、瑠璃の友人だったゆいから衝撃的な話を聞く。

レコードショップでアルバイトをしていた三角は、あるとき、雨宿りをしている女性に傘とTシャツを貸してあげた。ほぼ一目ぼれだった三角は、彼女にどこかで会えないかと苦慮し、ようやく会うことができた夜、三角の家で2人で一晩を過ごす。
その女性は瑠璃と言って、「瑠璃も玻璃も照らせば光る」ということわざを使って自分を紹介した。
不思議な雰囲気を漂わせる瑠璃とデートを重ねるが、あるとき踏切事故で瑠璃は死んでしまう。

三角は、その後、小山内瑠璃から亡くなる直前に電話を受け、「瑠璃も玻璃も照らせば光る」という言葉を使って自己紹介した、と小山内に話し、小山内瑠璃が、三角のもともと知っている瑠璃の生まれ変わりではないか、と話すが、小山内は憤慨して三角を追い返してしまう。

ゆいは、小山内と東京で再会したときに、小山内瑠璃の描いていた絵が三角であると小山内に告げる。絵を描いた時点で小山内瑠璃は三角のことを知り得ないのだが、なぜ絵が描けたのだろうか。



母娘を亡くした哀しみからうまく立ち上がれずに会社を辞め地元に帰ってきた、大泉洋演じる小山内。
その哀愁漂う姿は、コメディアンではなく俳優だ。
小山内へ向けられる真実の暴露は、つねに小山内を混乱させる。
ゆいの暴露は、いったい何で、なぜ小山内は信じきれないのか。当事者であるならば、同じ思いを持った可能性もあるけれど、人を愛し、人を信じ続けることがこんなに尊いことか、と映画の後半にかけて涙が止まらない。

すべては、5歳の時に高熱を数日出したことから始まり、いずれも生まれる時に天から授かった言葉かのように「瑠璃」と名付けられていく子供。
そのなんともご都合主義的な展開には目をつぶってほしい。むしろ、その展開を楽しんで、そして真実に感動してほしい。なんと素敵なんだろう。そう思わせる映画だった。