アー君

ザ・ホエールのアー君のレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.7
本当は先日の火曜日に映画館に足を運ぶ予定だったが、朝から咳が異常に続いたため、こんな体調で行ったところで発作を起こしたら他のお客様に迷惑をかけてしまうので体調を整えて水曜日のサービスデーに鑑賞をした。

ダーレン・アルノフスキーは「ブラック・スワン」「マザー!」以来で陰が強く内向的で理解し難い印象があるが、今回の「ザ・ホエール」の鑑賞後の感想としては舞台劇の映画化らしいが、ひとつの部屋だけで父親と娘の外側と内面を濃密に描いた人間ドラマであり、個人的には珍しく評価の高い映画であった。

【↓以下はネタバレ↓】










『この物語の登場人物たちは複雑な思いを抱くが、自分の人生を考えさせられたのでとても良かった。』

父親であるチャーリーは最初から娘の心理状態を文面から見抜いていたのだろう。

父と娘の登場人物以外のアジア系の看護師リズ、宣教師トーマス(終末論を話していたので、おそらくモルモン教系だと思う。)元妻のメアリー(演じたのはサマンサ・モートン)小説の登場人物と同様に多種多様であり、映画のキャストと呼応しあっている印象があり俳優陣の演技のすべてが絶妙だった。

クジラのモビーディックはチャーリーであれば、エリーは復讐心に燃えても空回りするエイハブなのかもしれない。

技術面では話題どおりに肥満男性の特殊メーキャップをかなり計算して作り上げていた。また画角をあえてスタンダードサイズにして狭くさせて体型を誇張するアイデアは素晴らしかった。

最後の一瞬だけ宙に浮いて天国へ召されるラストシーンには人により様々な意見があるとは思う。宗教による救いを拒否しながらも、あのような状況が起きたのかは疑念は残る。また自死の肯定のようにみえて挑発的でもあったが、私はそこまで整合性を求める必要はなかったのだろうと思う。

例えばエリーが宣教師であるトーマスの会話内容を録音して教会に送った悪意が逆に受け入れられてしまい、善意になってしまった場面があったが、アジア圏の思想には因果応報があるが、聖書にもそのような内容がないわけではないが、教えとしてそれほど重要ではないのではないかと推測している。

無神論者でも真実の神を見ることができる。宗教や戒律など必要なくとも素直に生きていけば何も臆することはないことを描いていた。

最終評価として久しぶりに素晴らしい作品に出会った事は先ほど述べたが、気になったというか全体的に宗教性がとても強く、キリスト教における同性愛に対する排他性やこの映画の焦点となった小説「白鯨」は名作だが、日本では海外ほどあまり認識されていないところが僅かではあるが減点要因となった。

そして意地悪な見方になるが、父親の最後の行動は感動よりも逆に娘の傷をさらに深くさせたかもしれないという憶測もある。笑

人によってはこの映画に対する解釈や意見もあるとは思いますが、理屈抜きにとにかく見て頂きたい映画です。

[イオンシネマ板橋 10:55〜]
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