むらむら

カメの甲羅はあばら骨のむらむらのレビュー・感想・評価

カメの甲羅はあばら骨(2022年製作の映画)
5.0
「キモっ! なんでこれを全国100館以上で公開してんだ?」

こんな疑問しか浮かばなかった謎作品。

てか、なんで俺は「すずめの戸締まり」観ないでコレ観てんだ?? 

俺が鑑賞した回では、観客は俺以外にボッチ3人のみ。ツイッターの公式アカに「絶賛上映中!」って書いてあるが、どこの誰が絶賛してるんだ!? いったいどんな企画会議を経て、この作品が作られたのか知りたい。

SNSで話題になったイラスト本を原作に作られたアニメ作品。

過去に行った「ミッドサマー」みたいな祭りの影響で、人間が色々な動物と融合してしまった世界(だと思うが、細かい説明はナシ)。主人公の高校生・カメ田は、カメのようにトロくて、親友のカエルくんと共にスクールカースト底辺に生息。大富豪の子息ライオンくんや人気モデルのフラミンゴちゃんのことを羨ましく思っている。こんな設定。

人間を動物と融合させたキモいキャラで高校生を描くのにまるで必然性を感じず、「フツーでいいやん」としか思えない。そしてキモオタの俺が言うのもアレだが、不器用に動く半人半獣たちに「キモい」という感想しか出てこない。

いくつかキモいポイントを挙げておく。

1.作画がキモい

元来のイラストが「これPS2で作ったんですか?」って感じのテイストなので、出てくる登場人物が全員ホラーゲーム「サイレン」の屍人にしか見えない。

「チェーンソーマン」や「鬼滅の刃」、「SPY✕FAMILY」といった高クオリティな日本アニメが世界を席巻している令和の時代に、このクオリティのCGアニメで喜ぶのはマーク・ザッカーバーグくらいだと思うわ。

ワニとかサメの顔した高校生を100歩譲って許したとしても、モブに大量にいる鼻がゾウになった連中の見た目はトラウマレベル。これイオンシネマとかで子供が観たら泣いちゃうよ……。

子供といえば命を助けられた子供の顔がカバと融合してて、殴りたくなるくらい可愛くない。「キモカワイイ」という言葉があるが、この作品の場合は単純に「キモい」。 一番かわいいハズの病弱な子供のキャラがキモキモなので、観客の忍耐力を試してるのかと本気で疑ってしまった。

2.脚本がキモい

こんなキモいキャラクター、高校生の青春物語を紡ぐより、「進撃の巨人」の巨人役として売り込んだほうがよっぽど勝ち目があると思うのだが、スクールカーストの話が延々と続く。

しかも主人公のカメ田に全然感情移入できないというオマケつき。

例えば、主人公のカメ田、友人のカエルくんが子供を交通事故から救ったことで一躍学校で人気者になるのに嫉妬して、とった行動が

「邪魔をする」

画鋲は撒くわ、食べ物にタバスコを入れるわ、学生の思いつく陰湿なイタズラをこれでもかとやってのける。カエルだけに足を引っ張る、とかそんなレベルじゃなくて、笑えない。いじめられっ子だった過去のある俺としてはドン引きですよ……。

節々に、自虐ネタみたいなつぶやきが入ってくるのも寒いので(これは好みの問題だが)作品に入り込めなかった。

3.演出がキモい

これも好みの問題かもしれないけど、絶望的に俺が面白いと思う部分と、演出の意図したい笑えるポイントがズレてて居心地の悪さを感じる。

例えば、カエルくんが体育館の壇上でスピーチしててゲロ吐くシーン。

初めて大人数の前に立った底辺スクールカーストのカエルくんは、緊張しすぎてゲロ吐くのよ。分かる、分かるよその気持ち。俺もクラスで「羅生門」の朗読させられたとき足が震えてドモったもの。

でもさ、そのゲロにカエルくんの顔スタンプをかぶせて、ギャグとして茶化すセンスってどうなの? って思うのよ。

監督自らが登場人物の苦悩を茶化してどーすんのよ。せっかくのカエルくんの見せ場なんだから、ここくらいは真面目に取り組もうよ。

終盤にある主人公と大富豪ライオンくんのダンスバトルだって、アニメでダンスバトルされても白けるだけなんだよね。しかも作画が凄いわけでもないし……こんなんだったら、この時間「RRR」の「ナトゥダンス」のシーン流してくれてたほうが100万倍良かった。

それと、ライオンくんは四つん這いで歩くのか二本足で歩くのか、キャラをハッキリさせてほしい。都合よいときだけ四つん這いになるな。

というわけで、真剣に取り組んだ制作陣には申し訳ないが、「こりゃ、お客さん入らないわなー」っていうのが納得の作品。よっぽど、この作品をOKにした企画会議自体を映画化した方が面白い作品になった気がする。

良かったのは冒頭のナレーションで頑張ってくれた高垣彩陽と、プロの声優として格の違いを見せつけてくれたライオン役の江口拓也。主役の清水尋也も頑張ってたと思うけど、個人的には「映画大好きポンポさん」の方がハマってたかなー。

音響は不思議とかなり凝っていて、5.1chをフル活用してるのか、モブの声が映画館の四方八方から聴こえてきた。こんなところに凝る前に、もっと根本的なところに問題がある気がするのだが……。

あ、唯一笑ったのがライオンくんの大富豪のお父さん(絵でしか出てこない)が想像以上にロバート・ダウニー・Jrだったところかな。

とにかく、ホント、キモい以外の感想が出てこず。何でこんな作品を作って、全国100館以上で上映してるか謎すぎる作品だった。プロデューサーが政財界のフィクサーとか、映画館の館主の子供が人質に取られてるとか、そんな裏事情を疑いながら劇場をあとにした。

人間を動物化して描くんなら、「ウマ娘」とか「けものフレンズ」とか「紅の豚」といった成功性がいっぱいあるので、申し訳ないけどそこには及ばない作品だなーって印象でした。ただ個人的には、配給会社&幹事会社のアスミック・エースが往年の名作「昆虫物語ピースケの冒険」をアニメ化してくれたら許すので、ぜひご検討をお願いします。

子供にトラウマを植え付けたい人には文句なしに★5の作品でした。

(おしまい)
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