むらむら

夏へのトンネル、さよならの出口のむらむらのレビュー・感想・評価

5.0
鉄道の脇の森で見つけた不思議なトンネルを巡る、高校生男女のひと夏の物語。

舞台は2000年代初頭。「どんな願いも叶えてくれるが、100歳、年を取ってしまう」と言われる「ウラシマトンネル」を発見した男子高校生・塔野カオル。彼は転校してきた女子高生・花城あんずと共に、事故で亡くした妹を救うという願いを叶えるべく、トンネルの探索を続ける。

遠い昔の高校生時代、地方男子校の寮という、塔野くんとは世界線の違う秘境で過ごした俺にとっては、眩しすぎる話だった。

偶然傘を貸したツンデレ美人女子高生が、同じクラスに転校してくるって、そんなのありえんやろ。

ってか女子高生に傘を貸せるだけで勝ち組じゃない?

俺、傘持ってない女性に傘貸そうとして、

「私、濡れるの好きなんでいいです」

って断られたことあるんだけど、何なのこの差別。キモオタの俺が、イケメン男子高校生と同じ体験は出来ないってワケ? 

しかも、この作品、ツンデレかと思いきや、水族館デートはするわ浴衣着て花火デートはするわ手はつなぐわで、塔野くん、モテモテすぎやろ。俺にもトンネル探せってことですかね?

まぁ、俺がトンネル見つけてたとしても、男子校だから、男✕男で探検して、危うく別の願いが叶ってしまうところだったかもしれないのだが……。

そもそも偶然知り合った美人女子高生が転校してくる、って、パンを頬張った女子高生と道端でぶつかる……くらいの懐かしい設定だよなぁ、とか、そーいう指摘は脇に置いておくとして、特筆スべきは、塔野くんと花城ちゃんの有能さ。

トンネルに「時間を遅らせる」効果があると気付いてからの行動が実に論理的で素晴らしい。

巧みにiモード時代の携帯を使いこなして、トンネルが、

「ある境界線を超えたら滞在時間3秒で、現実世界では1時間経過する」

ことを突き止めていく下りは、ホント有能。俺だったら、無意味に いっこく堂のマネしたり、一緒にトンネル探索に来た男子高校生と干からびたエロ本が落ちてないかと探索して、1000年くらい経過させてる自信あるもの。

その後、そのトンネルを使って二人はそれぞれの思いを叶えようとするのだが……これ以降はネタバレになるので割愛。過去に囚われた主人公が未来に向かうという気持ちの良い終わり方で、上映時間90分弱。よくまとまっているのは、さすが「映画大好きポンポさん」の制作スタジオと感心。

あと、本編の二人とは関係ないのだが、塔野くんのアル中オヤジが絵に描いたような(実際、絵に描いてるのだが)クズ中のクズで良かった。俺もストゼロと大五郎の飲み過ぎには気をつけようと思ったぜ。

というわけで、俺も、人生を変える魔法のトンネルを、ちょっくら探しに行ってきます!

おや、ちょうど「犬鳴村→」と書かれたトンネルがあるぞ……どれどれ……。

(おしまい)
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