無知A

すずめの戸締まりの無知Aのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.9
過去とどう向き合うか。過去と今の繋がり。そして、未来。扉を開けるというのは、鍵をかけるというのは一体何を意味するのか。流石、新海誠と言うしかない。毎度の事ながら、美しいアニメーションというだけに収まらない、内容の深さに心洗われると共に、強く心打たれた。

天気の子もそうだったが、今作もまた見方によっては残酷な物語だった。前作同様に、登場人物達のエゴを自然と受け入れさせ、その結末に皮肉を持たせることで、後味が何とも深いように感じた。過去と対峙し折り合いをつけて、現在という瞬間を噛み締めて未来に歩むのは、確かに素晴らしい。だが、この折り合いの付け方、というよりかは割り切りの露骨さが何とも目立った。だが、これもまた新海誠監督ならではの社会風刺であり、特有の深みなのかなと、個人的には好感が持てた。

総じて、過去から抱えた自分のトラウマへの理解や、そこから未来へ向けた行動など、今作では生きていくためのエッセンスがしっかり詰まっていたように感じた。ただ、そこに共感が出来るかどうか、ここには一種の皮肉が込められているように感じた。やはり、前作の『天気の子』と同様に、良い意味で尖った作品だなと思う。


(内訳)
面白さ 3.7
学び 4.1
構造 4.0
無知A

無知A