Ayumi

First Love 初恋のAyumiのネタバレレビュー・内容・結末

First Love 初恋(2022年製作のドラマ)
3.0

このレビューはネタバレを含みます


満島ひかりと佐藤健が主演、そして宇多田ヒカルの「First Love」がモチーフとなったドラマと聞けば見ずにはいられない、とばかりに週末を費やして完走してしまった。俳優陣の演技、撮影、衣装はすばらしいのだけど、脚本には違和感を拭えず。

高校生の也英の登校道、也英が「好きな食べ物はなんですか」と聞く校舎の屋上、深夜のレンタルビデオ店、二人が待ち合わせする雪に覆われたラウンドアバウトなど、美しくフィルムっぽい画に引き込まれる。八木莉可子と木戸大聖、初めて見たけれど、あの眩しくて美しい高校生を生き生きと演じていてよかった。満島ひかりはもちろん安定の演技、そして思いを抱え込む佐藤健の演技はとても好き。

ただところどころでセリフがチープに思えてしまって。也英の大学の先輩がいう「自衛隊は軍隊でしょ」からのケンカや、也英の義母が生まれを理由に也英たちを見下すところ、也英の母は捨てられたから也英に期待するんだという流れ、そして震災の描き方。どこかで見たようなシーンなので、その後のセリフが想像できてしまう。

これは物語の核心になるんだけど、「大学生の也英が事故に遭って、晴道のことを忘れてしまう」という設定は、どう考えても歌と合わない気がした。First Loveって「立ち止まる時間が動き出そうとしている 忘れたくないことばかり」「今はまだ悲しいラブソング 新しい歌歌えるまで」の詩もある通り、「大切な人と別れて辛いけれど、立ち直ろうとしている」という歌なんだと思う。だから、記憶のないまま別れてしまった、という展開に戸惑ってしまった。

この物語のベースにある、「思いは叶わなかったとしても、人が人に出会うことには意味がある」というメッセージは大好きで。8話で旺太郎がいう、「運命なんて大げさかもしれないけど、将来海老の養殖に成功したとして、財を成してかわいい奥さんをもらったとしたら、人は言うでしょう。野口也英が浦部旺太郎の運命を変えたでしょうって」には泣かされてしまった。

しかしそのメッセージを伝えたいのであれば、也英が晴道と出会ってどういう人生を歩んできたか、が必要だったと思う。それが記憶喪失という設定によって丸々と飛んでしまったのは残念だった。
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