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アガサ・クリスティー 蒼ざめた馬のtakのレビュー・感想・評価

3.5
アガサ・クリスティの原作は未読。格調高いミステリーを期待すると、違和感を感じるに違いない。なにせこのドラマ化はオカルトやホラーの作風なのだ。

主人公の妻が浴室で亡くなるエピソードで始まる冒頭。視聴者を引き込むような一点透視図法のアングルや、随所に出てくる左右対称ぽい構図は、非現実感たっぷり。主人公が疑念をもつ占い屋敷の名は黙示録の四騎士で死をもたらす騎士が乗る"蒼ざめた馬"。そこには「マクベス」の3人の魔女を思わせる怪しげな女性たち。死んだ女が遺したリストに名前が書かれた人々が次々に亡くなっていく展開は、クリスティ代表作めいた死へのカウントダウン。怪しげな村祭り。見る側を怖がらせつつ結末へと導く要素は、しっかり備わっている。再婚相手ハーミアの苛立ちとキレっぷりが不穏な空気をさらに深くする。

主役は近頃映画でも活躍しているルーファス・シーウェル。「ファーザー」や「オールド」で憎たらしい役柄を演じているから、そのイメージでついついドラマを見てしまう。事件に巻き込まれた不運なただの男で終わるはずがない…。

ところどころ難解に感じられて、気持ちよく納得できるミステリーではない。むしろ怪奇色を最後まで貫いているのがこのドラマのカラーなんだろう。ラストは、登場人物も見ている側もさらなる悪夢に引きずりこまれる。
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