☆☆ジャック・バウアーのいい人キャンペーン、CTU特別捜査官から大統領は出世しすぎ?
シーズン3までみたので、総論的なレビューです。
主役の大統領を演じたキーファー・サザーランドといえば、世界を熱狂させたあのドラマ「24」を思い出す。
「24」はシーズン8まで10年近く続いた大ヒット作。1話を実時間の1時間という設定とし、24時間リアルタイムで物語が進行するという画期的な構成だった。画面を分割し、登場人物らが同時並行で描かれる手法は否が応でも緊張感を増した。
主人公のCTU特別捜査官ジャック・バウアーという当たり役を得た。
しかし、いったん長寿番組で当たり役を得ると、その他の役を演じても、なかなか前のイメージが取れなくて、違和感を感じる。
本作の「サバイバー」では大統領役、その前の「タッチ」というドラマでは、特殊能力を持つ息子のお父さん役を演じた。
いずれもジャック・バウアーの影がつきまとっていて、実はCTUの潜入捜査の一貫なのではなかろうかと勘ぐっていた自分がいた(笑)
※当たり役のイメージ払拭に成功した役者は、「007」のショーン・コネリー、「3年B組金八先生」の武田鉄矢ぐらいじゃなかろうか(笑)
本作「サバイバー」は実際にアメリカ合衆国の政治の仕組みをヒントにしている。
アメリカ政府には、指定生存者=サバイバーという制度がある。
大統領や閣僚全員が会議など全員一箇所に集まる場所で、万が一テロや災害が起きてリーダー格が死亡した場合、政治の中枢が麻痺する。それはまずいだろうということで、リスクヘッジとして、あらかじめ物理的に離れた場所に、大統領の職権を継承できる人間を置いておく。それが、指定生存者=サバイバー。
本作の主人公キーファー・サザーランド演じるトム・カークマンは閣僚の一人ではあるが、どちらかというと政治の中枢とは折り合いがつかないめんどくさい系の人で、体よくサバイバーを押し付けられ会議から締め出されていた。
ところが、その会議の会議場がテロにより爆破され、大統領以下閣僚が死亡。トム・カークマンが大統領職権を継承し、つまり大統領になってしまうというお話。
ここまでは良かった。
さあ、ジャック・バウアーのおでましだ!
「24」では対テロユニットというわりには、めちゃくちゃセキュリティの弱い、テロ組織に通じた裏切り者だらけのCTUという組織に足を引っ張られていたが、今度は大丈夫。なんといっても大統領だから、特権つかって、テロを一気に追い詰めるぜ!!
と期待したのもつかの間。
あれあれ?なんか、ジャック・バウアーが政治やってる。
確かに非常時の大統領だからやることいっぱいだろうけど。
例えるなら、登場人物の座組は「水戸黄門」、物語のスキームは「王子と乞食」
黄門様って一人で全国行脚するのではなく、助さん格さんという優秀な右腕、左腕を子分とし、由美かおるとか(笑)風車の弥七とかスパイを放って情報をとる。
大統領のトム・カークマンもそういった優秀なスタッフに囲まれる。
「王子と乞食」というのは古典の定番で、王子と入れ替わった乞食が、普段王子ならやらないようなことをあっさりやってのけ、周囲を感動させるというスキーム。
トム・カークマンもこれまでの大統領ならやらない、言わない、ようなことをやるし、言う。大統領府に新しい風を吹き込む。
まあ、わかりやすい話といえばわかりやすい。
ただそれが終始してしまって、キーファー・サザーランドである必然性が正直なかった。
他の役者でも良かった。まさに役不足。役不足というのは、キーファーの力量不足という意味ではなく、キーファーにはやりごたえの無い役だったという意味。
キーファーを起用するのなら、大統領だけど、めちゃくちゃ現場で捜査して、めちゃくちゃ敵をやっつけ、瀕死の敵から
「お、お前、いったい何者だ?」
「はい、大統領です。この星条旗が目に入らぬか?」
という、遠山の金さんスキームが似合っている(いろいろ例えが古くてすみません笑)
その物足りなさが原因か、視聴率が落ち、慌てて初心忘るべからずということで会議場を爆破したテロ組織を追うような話も出てくるには出てきたのですが、時すでに遅し。
シーズン3で打ち切りと相成りました。
結局、敵の回収も中途半端で、由美かおる的な味方のスパイキャラを落とすという暴挙に出てしまった。視聴率インパクトを求めて制作サイドが焦ったのか、それともスパイキャラを落とすことで、これにて真相は闇のなかと降参を表明したかったのか。いづれにしても終盤はガタガタでした。
キーファー・サザーランドも「24」の夢よもう一度という気持ちもあるようなので(どっかのプレスでコメントしてた)、ぜひ、またプロデューサーとかではなくて「24」の主役として再登場を期待したいでーす。