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ウエストワールド<ファースト・シーズン>のaiaiのレビュー・感想・評価

4.9
☆☆わかりにくいと思うけど、本作はAIロボットのシンギュラリティを描きつつ、実はそれって人間が真理を追求することと同じ道筋なんだという帰結の物語・・・なんですよね~

古い映画になるが、レジェンド俳優ユル・ブリンナーが出演した、このドラマの元ネタ映画『ウエストワールド』のレビューで自分は、同じ原作者の大ヒット映画『ジェラシックパーク』の恐竜たちが、例えば人間そっくりのロボットだったとしたら、『ヨヨギパーク(代々木公園)』になってしまうと書いた(笑)

ロボが人間に近づけば近づくほど、その映像はどこにでもある風景と化し、まったくつまらなくなるということを言いたかったのだ。

しかし、このドラマはそれを逆手に取る。

あまりにロボが高度化したことにより(それを昔からアンドロイドというが、ここではあえてAIロボと呼ぶ)、人間とAIロボの境界が曖昧となり、誰が“AIロボ”で誰が“人間”かわからないような仕掛けになっている(ドラマの後半で驚愕の事実が明かされる)

かつ、AIロボは歳をとらないが、人間は歳をとるという当たり前を巧妙なトリックとしてパズルのように組み込んでいる。

ノーランマジックというのか、まあ、ちょっとずるいし、わかりづらいよねと思った。

本作のドラマの中でも“想像力”という言葉が出てくるが、まさに“想像力”抜きでは、パークに訪れるゲストのみならず、このドラマの視聴者も「ウエストワールド」を楽しめない。

ゲームというのは、それをゲームとしてさめた目でみると、それこそゲームオーバー。
それがゲームであることを忘れ、いかに、ゲーム世界に没頭できるかどうか。

ウエストワールドという、虚構のゲーム世界に没頭し(その世界の住人となり)、その上で、その先にまだ何があるのか?というのが、このドラマの導線になる。

その先に何があるかを探るドライバーは、パーク内の一部の“ホスト”つまり、AIロボのドロレスという西部の牧場の娘である。

彼女を中心とした登場人物の主な座組は以下のとおり。

・近々資産家の娘と結婚することになっている若者で、バチェラーパーティーの一環なのか、その娘の兄とウエストワールドに遊びにきているウィリアム。

・ピエロ役(意味的な道化役として)テーマパークの創業者の一人でもある、フォード博士。パーク内では、ある種“絶対神”のような存在。

・フォード博士の右腕、バーナード。知的、冷静沈着。

・黒服の男(謎)やたらパーク内で傍若無人に振る舞う大金持ち。

・ドロレス以外のパーク内のAIロボ達

彼らはみな、この『ウエストワールド』で何かを探している。

***では何を探しているのか?

AIロボを人間に近づけようとプログラミングする際にぶち当たるのは、人間って何だ?という人間定義の壁。

突き詰めると、それは“自分って何だ?”とか、“自我とは?”みたいな禅問答になっていき、その先に現れるのは、

“我々は何のために生きているのか?”

多くの哲学者たちがハマった人類永遠のテーマ、すわなち決して出口の見つからない“迷路”に陥ることになる。

このドラマでたびたび出てくる“迷路”とは、そういう哲学上の“迷路”です。

“自分は何者か?”

“どこからきて、どこへいくのか?”

“どこへいくべきか?”

そういった人間に与えられた命題の“解”は、虚構の対極、すなわち”現実”にあるのではなく、虚構の“線上”にこそ存在するのではないか?

つまり、『ウエストワールド』という虚構世界にこそ、その“解”があるという仮説。

現実に無いのであれば、虚構世界(ウエストワールド)に乗っかるしか、解を見つけ出す手立てはない。

その仮説がこのドラマの主軸であり、彼ら全員をそのプロット(脚本)のなかでつき動かしている原動力となっている。

もしかしたら、その原動力は我々人類さえも突き動かしているのかもしれないというメタファー。

***

レビュータイトルにも書いたように、AIロボのシンギュラリティを描いてるようで、実は人間が真理を追求する物語になっている本作は、その表向きの顔から想像できないほど複雑な話に仕上がっている。

自分的にはギリ、セーフで、非常に秀逸な物語だと評価している。

が、人間の深淵を覗こうとしているのか、製作側のJ・Jエイブラムスもノーランも、彼ら自身が“迷路”に取り込まれてしまったような印象もある。

これ以上この線を押していくと物語がダッチロールしそうで心配。

そろそろ適当に切り上げ、本来のAIロボの面白さに言及するほうが、ドラマツルギーとしては”吉”と思う。

***ちょっとした疑問

見落としかもだけど、9話に起きたフォード博士とバーナードの結末と、10話でのフォード博士とバーナードの再会時の、フォード博士の反応が辻褄が合わないような気がする。これも時系列マジック?いや、ドロレスの衣装と物語の流れからも、現在と過去が入れ子になってはいないと思うんだけど。。。脚本のノーラン自身も混乱してたりして?(笑)
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