エピソード05
第5話
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あらすじ
季節は移り、空が高くなる頃。
ヴァイオレットは数々の手紙を代筆し、貴族の間で話題の自動手記人形になっていた。
今回、ヴァイオレットが代筆するのは隣国へ嫁ぐ王女の恋文。
ドロッセル王国の王女とフリューゲル王国の王子が交わす恋文を国民に公開することで、
国を挙げて二人の結婚を祝う。
これは王国の伝統的な儀式であり、戦時中に敵対関係であった両国の和平を結ぶ「婚姻外交」
でもあった。
ドロッセル王国の王女・シャルロッテは、14歳のあどけない少女。
異国へ嫁ぐことも、侍女のアルベルタと離れることも、不安でたまらない。
王女の恋文を代筆するのは、彼女と同じ年頃の自動手記人形、ヴァイオレット・エヴァーガーデン。
ヴァイオレットは古今東西の書物から得た恋愛の知識で、見事な恋文をしたためる。
しかし、シャルロッテの表情は晴れない……。
数年前。白椿の花壇でのこと。
一人で泣いていたシャルロッテに、フリューゲル王国の王子・ダミアンが声をかけた。
飾らない笑顔、ありのままの言葉でなぐさめてくれたダミアン。
その時、シャルロッテは王子に恋をした。
それなのに……。
王子から届く自動手記人形が代筆した恋文は、シャルロッテを不安にさせる。
美麗に飾られた恋文に、王子の心が見えない。
王子と王女の恋文に国民がどれほど沸き立とうとも、国内が平和の気運に包まれようとも、
シャルロッテの涙は止まらない。
同じ年頃の少女の恋心に触れたヴァイオレット。
「あなたの涙を止めて差し上げたい」
そう告げて、ある行動に出る。
それは、シャルロッテとダミアンに自らの手で恋文を書かせること。
ありのままの言葉、ありのままの筆致で綴られた恋文は、二人の心を近づける。
そして、ダミアン王子から届いた最後の手紙には一言。
「今宵、月下の庭園で待つ」
その夜、二人は初めて出会った白椿の花壇で永遠の愛を誓った。
結婚式の朝。
姫は、生まれる前から時間をともにした侍女・アルベルタに心からの感謝と別れを告げる。
シャルロッテの瞳に涙はなかった。
同じ頃、ヴァイオレットの瞳にも清々しい秋の空が映っていた。
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