回想シーンでご飯3杯いける

平家物語の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

平家物語(2021年製作のアニメ)
3.9
「犬王」で見られた「平家物語」の独創的な解釈が面白かったので、同じアニメ作品であるこっちはどうなのかと、試しに観た。監督は京都アニメーションで「映画 聲の形」等を手掛けた経緯を持つ山田尚子。制作は湯浅政明が発起したサイエンスSARU。

2010年代に現代版の翻訳として刊行された「平家物語」をベースにしているらしいが、基本的な世界観は正統派の歴史ものだ。露悪的に描かれる源氏の扱いに疑問を感じるものの、平家側で極端にアレンジされた人物はおらず、琵琶法師の目線から、時代に翻弄されながらも生きる平人々の様子を描いている。初公開はネット配信らしいが、その後、これだけ硬派なアニメ作品が地上波で放送されていた事に驚く。

特徴的なのは、風や雪、海などの自然を、とても抒情的に描写している事。それは時に登場人物の心情を表すメタファーとして挿入される。

平家の人間の多くは幼少時代から大人になっていく様子を追う形で描かれていて、戦に臨む人間の生々しい感情を感じ取る事ができる。

そしてなんと言っても琵琶の音色だろう。メインパートはほのぼのとしたムードを持つ作品であるが、各話の終盤に挿入される主人公「びわ」による演奏と語りで、悲哀に満ちた平家物語の世界に引き込まれる。思わず琵琶の通販サイトを覗いてしまったよ。