回想シーンでご飯3杯いける

機動新世紀ガンダムXの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

機動新世紀ガンダムX(1996年製作のアニメ)
3.5
【TV/OVA版ガンダムを製作年順にレビュー中】

Filmarksのスコアを見ても分かる通り、この「機動新世紀ガンダムX」の評価はシリーズの中でもかなり高い部類に入る。しかし、長年にわたりシリーズ最低視聴率の記録を保持した、不遇の作品となってしまう。

本作は全39話で完結する、完全なオリジナル・ストーリー。やや色モノ的に展開された平成ガンダム初期作品の中で唯一、骨太で壮大なストーリーと世界観を持つ本作は、ある意味、王道のガンダムと言える。

しかし、ファーストガンダム世代は本作放送時で既に30歳を超え、アニメ自体から離れていた人も多かっただろうし、そのアニメの世界では「エヴァンゲリオン」が大ブームになっていた時期なので、この"骨太で壮大"なテイストは、ややバタくさく見えてしまったというのもあると思う。

「機動武闘伝Gガンダム」や「新機動戦記ガンダムW」と同じく、この「ガンダムX」にも、当時の世相、流行が色濃く表れていると思う。'96年と言えば、ソニーのプレイステーションと、セガ・サターンが熾烈な販売合戦を繰り広げていた時期。つまり家庭用ゲームのブームが最高潮に達していた時期だ。その花形だったのがRPG(ロールプレイングゲーム)である。

ヒロインの予知能力や記憶の糸を頼りに舞台が展開する「ガンダムX」は、見事にRPG的だ。しかし、その一方で、想定していた視聴者層そのものが、家庭用ゲームに取り込まれてしまっていたというのもあったのか、先に書いた通り本作の視聴率は停滞の一途を辿る。

制作陣が掲げた本作のテーマは「ガンダムを考えるガンダム」だったそう。戦争時代の生き残り="ニュータイプ"を探す旅が軸になっている本作のストーリーは、つまりそのまま"ガンダムとは何だったのか?"を探ろうとする、壮大な試みだったと思う。ただ、その試みを作品として完成させるには、やや中途半端だった印象も拭いきれず。結果的に、この課題は、続くテレビシリーズ「∀ガンダム」に持ち越される事になった。