たも

GREAT PRETENDERのたものレビュー・感想・評価

GREAT PRETENDER(2020年製作のアニメ)
4.0
 全4章23話からなる令和の石川五右衛門、もとい義賊寄りのルパン三世やオーシャンズシリーズなどと肩を並べる盗賊団というか詐欺集団のお話。通称コンフィデンスゲームと言うらしい。平成がクロサギなら、令和はグレートプリテンダーか。

 ハッキリ言って話の構成上、展開は読みやすいし、主人公はトロいし、言いたいことはハッキリしないし、嫌いな人はあっという間にそっぽを向いてしまいそうな作品だった。それでもOPから始まり背景やその色使いセリフ回しやらセンスの良さ、オシャンな雰囲気と軽快な場面展開で全てを掻っ攫っていく溢れんばかりの魅力が本作最大の良いところ。
 見てられないほど退屈なシーンも一切なかったしかなりの良作。

 24年冬の今期に2期が来るって事で未視聴だった本作を一気見で完走した。2クール一気に見れるほどおもろかった。2期のポスターがカッコよくてこの作品に手をつけたいと思ったけど観て大正解だった。2期にも期待。

 ※以下ネタバレ※

 良いところを何個か羅列するとまず初めに、主人公がポンコツに近いと見るに堪えない作品になりがちだけど、今作はポンコツというか直向きなところに味方からのリスペクトが感じられて不快感を全くと言っていいほど味あわずに済んだ。
 あとはやっぱりカーボーイビバップを踏襲したとしか思えないジャズにサックスのOP。正直カッコ良すぎてシビれた。EDはフレディマーキュリーを持ってくる辺りも作品との相性の良さを感じて好感度マシマシ。猫かわええ。
 あとはアニメらしくないところ(褒めてる)。どちらかといえばこの作品は映画に向いていると感じた。というか場面転換のカメラワークやら、タバコの吸い殻で時間の経過をあらわしたり、名作文学とか小物の使い方から話の構成から映画の作り方そのものだった。おそらく手書きっぽい背景とか見ると力の入り方もわかると思う。最近は当たり前になりつつあるけど、実在する建物とか、部屋の隅々まで随所にすげえ描き込まれてるって感じるシーンがあった。巻き起こることも派手だし、大衆受けの良さそうなド派手なアクション、欲の根源みたいな題材が多かった。
 今作全てを通して1番のお気に入りは3章のSnow of Londonだった。芸術を志すものが金の力でねじ伏せられるところは心が痛すぎて登場人物たちに共感するのをやめたくなった。紙に描いた指輪とか、数十年の年月が経っているせいでやり直すことが叶わない、やるせなさを大きく増長させてる。製作陣はきっと意図してないと思うけど最後のオークションで7000万ポンドからどんどん額を競り上げていく様が、まるでニューシネマパラダイスのラストシーンを観てるような気持ち良さ、むしろ美しさみたいなものまで感じてしまった。清々しい、解放感にも近い気持ち。カタルシス。実際にやっている行い自体は復讐に近くて決して褒められたものではないし美しくもないんだけど、卑劣な行為に対する報いに値すると感じた。
 1章でブレイキングバッドの主人公の名前が出ていたし、これだけ作り込まれていてタイトルとEDにフレディマーキュリーを使ったりハリウッドが登場している辺りまだまだコアなファンが歓喜するネタが転がってそうだと感じた。

 逆に悪いところを挙げるとしたら、個人的に納得いかないのは上記の話に繋がるけど、麻薬カルテルや八百長や偽物の芸術品を扱う犯罪者たち、こいつらが金で野放しになっていたところ。まじで許せねえ。現実の世界も大差ないんだろうけど。終わりよければ全てよし昔の敵は今日の友みたいなエモさのために全ての犯罪が蔑ろにされているような気分になった。まあそもそも騙し取る行為自体が良くないっていう極論は置いておいて。
 人身売買を題材にするのも問題提起って側面で見れば聞こえは良いけど目も当てられないほどエグイと感じてしまった。実際に報道されないだけで中国やらタイやらフィリピンなんかでも人身売買は横行していると耳にするけど、もしかしたら日本でも検挙されないだけで存在してるのかもしれない。
 あとは触れるか迷ったけど4章のオチの展開もコメディに寄りすぎてしまってると感じた。上記の犯罪者たちの扱いとも繋がるけど、そこがこの作品らしさでもあるし多分あれだからこそ良いっていう人も多くいそうだとは思う。圧倒的に喜劇をしているのはむしろ良いところだと思うし、この辺は好みの問題だろうか。
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