たも

ウマ娘 プリティーダービー Season 3のたものレビュー・感想・評価

3.5
 ウマ娘ここに完結。と言ったら語弊を招くかもしれないけど、完結の言葉が似合う作品だった。2期の終わりの時の感想は次作があるなら絶対に観たいって気持ちにさせられたけど、本作の感想は4期があっても見るか迷う。

 悪く言えば置きに行った印象だった。良く言えば安定を狙っている。もしかしたら令和最高のアニメと言っても過言ではない2期を越えるのは無理かもしれないけど、それくらい面白いって期待を込めてしまったせいで心の底から楽しめなかったのかも。進化し続けてほしいって期待はエゴだし完全にこちらが悪いけど、どう転んでも本作を2周目も見ようとは思えない。時間が経っても気持ちは揺るがないと思った。とは言いつつもトウカイテイオーのレースを回想するところはいつだって涙が出てくるし、テイオーは最高だったっていう気持ちを思い出させてくれる。テイオーのアフターストーリーを楽しめるっていう点に於いては良い作品だった。逆に言うと既存のキャラの出番をもっと減らすべきなんだと思う。これだけたくさん魅力的なキャラが居たらそんな大胆な方に舵を切れるわけないけど。

 1期のWヒロインはスペスズ、2期はテイオーマックイーン、3期はキタサンダイヤの組み合わせ。全てのシリーズでお互いにライバルだけど仲が良くて、お互いがお互いを高め合うってお決まりがあったし、本作も例外じゃなかった。ただキタサンが引退を決める件で2人が話し合いにならずにお互いが即納得な上にキタサンが独断で全てを決めることにキャラの性格的にも違和感を覚えた。現実世界ではG1で7勝だか8勝したってブランド力があって引退させることで若くて種馬としてメリットがあるし引き際が良いし有終の美とかなんとかって聞こえが良くなってたけど、ウマ娘のキタサンの性格ならあそこで引退をあんな簡単に決断できるのか…?って思ってしまった。勝ってるレース的にも長距離馬っぽいけど体力が衰えてきたなら中距離を狙ったり短距離をバクシンしたり出来そうだと思ったし、なにより全盛期を過ぎたからって諦めるような人格には見えなかった。

 忠実に話をなぞるのも大事だけど、1期ではサイレンススズカの骨折から安楽死の流れが生存ルートになっていたり、2期のようにダブルジェットもといツインターボ先輩の活躍をテイオーの復活に結びつけるみたいな話を脚色してもっと感動を誘うような仕掛けを組み込んでもよかったかもしれない。もしかしたら提供してくれた馬主さんとかそっちのサイド側が首を縦に振らなかったのかもしれないけど。
 話の構成が二番煎じに感じたし、新しいテイストの感情が動く面白さが見つけられなかった。単純なストーリーとかボケっぱなしのギャグとかは変わらず面白かったけど。
 前作までのモブが発する言葉は同調できたけど、商店街を筆頭にキタサンのファンの熱い気持ちには上記の引退までが早すぎる流れのせいで全く乗れなかった。
 カスタードをカスケードと言い間違えそうになるマキバオーネタを擦ったり、人気のあるであろうライスシャワーやらナイスネイチャやらの出番が多いのも置きに行った印象を強めた。まあファンにウケが良ければ衰退はしないだろし完結とまではいかないか。

 ウマ娘の1人のファンとして1つだけ戯れ言というか提案があるんだけど、トレセン学園を退学したウマ娘がいたり、トゥインクルシリーズを引退したウマ娘がいたり、そんな生徒たちが在学している理由づけに、競走馬から他の職業に転職するって描き方はどうだろうか。つまり世界観を落とし込むのはどうだろう?
 世界各国で老若男女から果ては宇宙飛行士までレースに注目していて、町中でどの娘が勝つか議論が起こって、怪我をしたら大画面のモニターで大ニュースになる世界線で、例えば足の速さを生かしたレスキュー隊とか、タクシーやら人力車とか?まあその辺のアイディアは腐るほどあるだろうけど、そしたらオリジナルキャラも作り放題……。ここまできて多分そっちに舵を切ることはないんだろうなあ。せっかく3部まで続いてこれからも続けていけそうなのにこのままマンネリしたらとても惜しいと思った。
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