原作はおそらく分厚い長編小説なのだろう。
その風格が漂う割には回り道が少ないためか肉付きが悪く、直線的なプロットに物足りなさを感じてしまった。
張り詰めた空気に緊張と恐怖を覚える。それも全編を通してだ。健康な時に見ないと全て奪われる。
自閉症(おそらく)の息子と相性最悪のコミュニケーションを図る母、度重なる死、あまりにも手軽な凶器、全ての歯車>>続きを読む
「強要はされていなかった」
ここまで肉声や手記をはじめとした証言が残されていることに驚く。ヒトラーやアイヒマン、ヒムラーやハイドリヒではなく、直接手を下した"ふつうの人々"の実像に迫るのは貴重。
8>>続きを読む
油断していた。想像の5倍くらい情報量が多く展開がびっしり詰まっている。つくづく稀代の監督だなと思う。
懐かしのスパイキッズだと思って。
子供向けなので大人1人で見るのには適してないかな。メッセージはしっかりしてる。
この手の題材には映画においてもドラマにおいても秀作が多い中、今作が目立つことはないだろう。説得力の弱さも相俟って特に終盤にかけて胃がむかむかした。あとナレーター?というかストーリーや心情を積極的に説明>>続きを読む
愛と戦争は近しい。欲する程に狂気性を増してゆく姿は、男性性の正体にも見える。身を捥ぐと、詰まっているのはエゴと自慰だけ。そこにコミュニケーションの余地もない。冷たく悲しい青褪めた夜。興醒めするような虚>>続きを読む
「タイタニック」でコルセットを締められていた女性が、今作ではその束縛を脱ぎ捨て、さらには愛する者のコルセットをほどく。ケイトウィンスレットという役者の佇まいに見惚れる。
作品としては地味な印象だが、そ>>続きを読む
イタリア映画歴代トップの興行収入らしいがほんまかいな。社会風刺といえどテーマも台詞も古臭く、おバカな主人公も愛し難い。全体的にあらゆる面が弱すぎる。
女の性に対する主体と客体が入り乱れ、誰と手を繋ぐか、誰のどこを掴むか、の応酬。圧巻としか言いようがない。
ほぼミッドナイトインパリ。
うだつの上がらない主人公は疲れてしまってうとうと。すると夢に誘われ一昔前に。その世界でもみんな口を揃えて「昔は良かったなー。」じゃあもっと昔へ。やっぱりそこでも皆昔を羨む。
状況説明や回想の演出だけは異常に巧い。
しかし最後それでええんかい。
「この出会いは一度きり」だから大切にするべきって言われると思ったら拍子抜け。別の世界線で一緒にいられる訳じゃないからの教訓ちゃう>>続きを読む
この題材にしては退屈。しかし一定の評価が得られてしまうのがずるい。ネット小説が原案らしいが、このくらいの解像度の話なら自分でも書けそう、と思ったのでその時点で少し冷めてしまった。
「僕らの先にある道」>>続きを読む
何というか直近に観た「マイエレメント」もそうだが、純真な愛の物語に敵う障壁など何もない!と明確に言い放つ作品がたまらなく好きだな。
今作が支持するあらゆる政治的スタンスを私も支持する。
「なまいきシャルロット」の主人公だって人、くらいの認識で母のことも知らずに見に行ったが、不覚にも最後に泣いてしまった。
母と娘、親しい相手との間にあるどうしようもない空隙。それを直視できる人がどれくら>>続きを読む
「戦後8年の製作か...」と年数を数えながら、2023年が「戦時中」である事実と、日本の「戦前」である可能性のあまりの大きさに耐えられなくなって寝た
これから犠牲になる人々の名前によって主人公は救われる。600万人の犠牲者の1人1人に名前があったことを報告するシーンは忘れ難い。
人間は、
虐殺の隣で恋愛することができ、
飢えの隣で肉魚を選ぶことが>>続きを読む
フェミニズム映画であることはもはや大前提で、特段革新的でもないしどちらかというと教科書的。フェミニズムは結果的に男性の男性による男らしさの呪縛をも解き得るよ、男性と衝突するものではなく、ましてや分断す>>続きを読む
戦後の物語であることから戦争孤児であろうか。
とある罪を犯した孤児の男の、寄る辺無き魂の放浪。戦後の傷跡の記録。
雨にも泥にも構いなく打たれる姿からは、ジェラール・フィリップという美しい入れ物を手に>>続きを読む
世界観の造形を見るとある程度のテーマ性が推察できてしまうのだが、にしても想像通りの魅力的で明るい未来へのメッセージ。
しかし想像の何倍もロマンティックなストーリーで驚いた。これは大画面で色彩を楽しみと>>続きを読む
もう60年も前に、なんて鮮烈なクィア映画だ。過去にこのような悲しみがあったからやっと明るいクィア映画を今日描けている。
特筆すべきは夢と現実の造形美。
忘却と現実逃避の誘惑に抗えない人間の性を、滑稽にも美しくも白と黒の二本の筆で描く。
中年の有名映画監督と若手新人、
ジャニー喜多川の件が真っ先に脳裏にチラつくような年齢差と権力勾配の関係図だが、その歪さを醜態として描き、笑い物にして突き離しさえする。同情ではないデザインの仕方に好感を>>続きを読む