はいさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

枯れ葉(2023年製作の映画)

4.5

久方ぶりに戻ってきた彼の映画はこれまでにも増して澄んでいた。カウリスマキのリズムの中で生きていきたい。その冷たさで額の熱を冷やしたい。多すぎる表情筋は忘れてしまい、持て余す情報を瞳の奥に閉じ込めたい。

あしたの少女(2022年製作の映画)

4.0

原題が「次のソヒ」であることがただただ辛い。
昨年の日本の自殺者数は2万人を超える。その内、勤務問題を苦に命を絶った人が占める割合が大きいことは想像に容易い。自殺者が2万なら悲しむ者はその何倍もいると
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.0

はっきりと孤独の存在を認識して戸惑う人間に対して共感や感情移入をするので、もう既にそれを飼い慣らしたか感じなくなった平山が宇宙人か何かに見えた。あのように人間は慎ましく生きることができるのか。私は到底>>続きを読む

ボトムス ~最底で最強?な私たち~(2023年製作の映画)

3.5

アップデートして女性のための学園「ファイトクラブ」をやりたい、というのは分かるがところどころかなりぶっ飛んでた。
ホモフォビアもミソジニーも根強く定着している舞台で、昨今の理想化されたティーンムービー
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ハロー!?ゴースト(2023年製作の映画)

3.0

異性に救われる理想主義な美女と野獣的な要素、要る??主人公の身の上話では感動したが

「君の心に刻んだ名前」の人だと知ってただただ驚き。

EO イーオー(2022年製作の映画)

4.0

映画としては優秀。要所要所に挟まれた視覚的に目立つ補助効果は、若干うるさく感じてしまった。この映画を観てもなお、ブレッソンの「バルダザールどこへ行く」を観た時の動揺は希釈されない。

EOが出だしの女
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サンザシの樹の下で(2010年製作の映画)

3.5

何らかの時間の猶予が無い人たちが、国の政策がこうだから社会がこうだからという理由で、悲しい最期を迎える、という物語が個人的な悲劇で語られることに抵抗がある。それは社会の落ち度だ。その点、この作品は前者>>続きを読む

美しき冒険旅行(1971年製作の映画)

4.0

理由は言語化できないが、たぶん一生頭に残る作品だ。

ファミリー・スイッチ(2023年製作の映画)

3.5

予定調和で特筆すべき点は無い家族愛映画。ではあるがセーターとブランケットが恋しくなるクリスマス映画でもある。

キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩(2021年製作の映画)

4.0

国に属することで人生が決まってしまうことを知ったら間違いなく産まれてきたくない。どれだけ人間讃歌を描かれてもなんというか人間を辞めたくなる。昨今の世界情勢をみると尚更。
パレスチナでの動かなくなった灰
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ラブ&ドラッグ(2010年製作の映画)

3.5

よく出来た面白いラブコメ。よく出来すぎて難病の扱いがゆるふわすぎるなーとか色々あるけど、分かりやすくて良い。
あと、このシチュエーションが男女逆だったら今でも成立しないよね。

アメリカン・ヒストリーX(1998年製作の映画)

4.0

憎しみによる負の連鎖の話だが、どっちもどっち論では絶対にない。
先日、日本保守党なる新党がこの映画に散りばめられた白人至上主義台詞をなぞるように演説を繰り広げていてぞっとした。初めは優しい言葉に始まり
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キリエのうた(2023年製作の映画)

4.0

大過去、過去、現在が同時に進行していくのが人生だと言わんばかりの圧倒的説得力をもった語り。物語ではあるが、物語になりすぎてないところが監督の手腕、経験値か。苦しみはあるが絶望させず、落ち度を嫌悪には変>>続きを読む

プチ・ニコラ(2009年製作の映画)

3.5

映画が喋りすぎ。喋りすぎな映画は疲れる。
キアロスタミの「友だちの家はどこ」やトリュフォーの「あこがれ」が如何に子供の精神世界を巧みに再現してたかが強調される。

優しき罪人(2018年製作の映画)

4.0

「被害者と加害者の交流を通して人生のままならなさを描く」と書いてしまえばそれっきりなのだが。取り返しのつかない細い線の上を歩くことが人生だとしたら、あまりにも重い映画だ。

シング・フォー・ミー、ライル(2022年製作の映画)

3.5

喋れないが歌えるワニが何故か存在している、っていう設定だけでだいぶ面白い。しかも口からビルボード1位の歌声。一応、ミュージカル映画なのでここまでぶっ飛んでても全然いい。欲を言えばもっとミュージカルして>>続きを読む

夜空に星のあるように(1967年製作の映画)

3.5

ケンローチのデビュー作がまさか女性が主題だとは。社会構造的な女性の無力と不条理という点でバーバラローデンの「WANDA」やダルデンヌ兄弟の「ある子供」が連想されたが、映画的快楽はどうしてもそれらが上手>>続きを読む

一晩中(1982年製作の映画)

4.5

とても五感的な映画だった。
暑い夜の滑らかなシーツの冷たさすら感じる。脚を滑らせ、まだ体温に侵されていない冷ややかな部分を求めてしまう。明け方の珈琲の香ばしさに胸を焦がす。

アケルマン以外全ての作家
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去年マリエンバートで(1961年製作の映画)

4.0

これは傑作だ。恋情に晒された私達の脳内が鬱々と蝕まれていく様だ。それは時の回廊となり時間を超越も、生死すら超越していく。かと思えば行く宛てはまさに"此処"にしか無くその場にとどまり続ける。
この映画に
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Dr.コトー診療所(2022年製作の映画)

3.5

16年ぶりの新作という情報と、吉岡秀隆と柴咲コウが結婚してしかも妊娠しているということ、さらにかなり老いた姿の吉岡秀隆と歳月を感じさせない柴咲コウのビジュアルに「え、この人ら何歳設定なの?」という疑問>>続きを読む

テオレマ(1968年製作の映画)

3.5

奇跡を見てるのか信仰を見ているのか病を見ているのか判らなかった。解放か束縛かすら怪しい。こんな物語を造るなんて人間て面白いね的な楽しみ方をさせて頂いた。

若者のすべて(1960年製作の映画)

3.5

画の強さと展開のリズムが良すぎて3時間を感じさせない。
シモーヌが吐き気をするくらい卑劣で許容し難い。移民と貧困の背景が流れるが、だとしてもホアキン版ジョーカー的な動機が成立しないくらい愚かで存在が苦
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ファルコン・レイク(2022年製作の映画)

4.0


好きか嫌いかは置いといて、あざといくらいに巧い。16mmフィルムによる快感もさることながら、モチーフの蓄積と雄弁な情景文脈だけでも一級の映画として成立してしまう。映画を観たという満足度が異常に高い。
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忘れられし愛(2023年製作の映画)

3.5

原作はおそらく分厚い長編小説なのだろう。
その風格が漂う割には回り道が少ないためか肉付きが悪く、直線的なプロットに物足りなさを感じてしまった。