KengoTerazonoさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

一晩中(1982年製作の映画)

-

アケルマンの映画は移動と静止が面白いと思うけど、この映画は照明の映画という感じがした。

ずっと画面が暗いが、平板な暗さではない。少数の印象深いライトによってできるコントラストが立体的な影を生む。人の
>>続きを読む

ゴールデン・エイティーズ(1986年製作の映画)

-

ゴダールミュージカル的な構図が多くあって面白い。

個人的にはとても好きな作品。移動撮影もダイナミックだが人の移動もダイナミックで常にひっきりなしに人が外へと出ていき内へと入っていく。パフォーマンスに
>>続きを読む

アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学(1988年製作の映画)

-

冒頭のナレーションが『ゴダールの決別」で使われているテクストで面白かった。

移動撮影は冒頭の船から撮ったと思われるショットくらいでほとんどキャメラは固定され、役者が観客に向かって語りかける。

ユダ
>>続きを読む

私はトンボ(2022年製作の映画)

-

当事者じゃなければ撮れないし、ここまで自分を追い詰めて、曝け出して色々なものにキャメラを向けるというのがすごい。

大人をクソだと思っている高校生から、自分も気づけば大人の側に立つわけで、この映画に撮
>>続きを読む

あの島(2023年製作の映画)

-

フッテージを全部平等なものとして用いる。リハの時の空気感とか、そういうパワーみたいなものを使いたいっていうのはなんかわかる気がする。私も作品を撮ったりするので。

日々“hibi”AUG(2022年製作の映画)

-

無論、意図しなかったことが画面に入り込むのだが、この日々撮られる15秒のショットは後から振り返られ、繋げて観られることを考えて撮られている。そうである以上、なんらかの意図や繋げた時にある意味が浮かび上>>続きを読む

ふたりの長距離ランナーの孤独(1966年製作の映画)

-

面白すぎ。

最初は突然割り入ってきた日本人ランナーに目がいくが、あの日本人はイレギュラーすぎてキャメラワークを基準にしてみた時、主役になりきれていないというのが面白い。
ずっと黒人ランナーに合わせて
>>続きを読む

この雪の下に(1956年製作の映画)

-

雪国の人々にとっては肌に染みついた動きをキャメラの前で再現させる。その構図の美しさも惚れ惚れするが、そこで繰り広げられる日常の動作がやはり美しい。再現ではあるがその手の細やかな動きや、手の皺に長年の雪>>続きを読む

マリン・スノー-石油の起源-(1960年製作の映画)

-

素晴らしい。

時間のダイナミクスに圧倒される。微生物の短い一生から何千万年という時間の尺度へ一気に転じる。

微生物のミクロな世界をあれほど細かく繊細に撮影している技術と撮影者たちの労力も凄まじいが
>>続きを読む

ニッツ・アイランド(2023年製作の映画)

-

コロナ禍で、世界中の人々がまさに自分の家という孤島に軟禁されているなか、ゾンビサバイバルゲーム内にいる住人をドキュメントする。

プレイヤーの演技に乗っかりながらその間隙をつこうとする。演技の裏側に迫
>>続きを読む

ある映画のための覚書(2023年製作の映画)

-

テクストが常に映像の一歩前を行く映画
全ての出来事が展開し終わった後の土地において、映画内で再現しよう試みている出来事の足跡をたどりながら実際にキャメラの前で演じなければいけないとき、どのようなやり方
>>続きを読む

地の上、地の下(2023年製作の映画)

-

状況を当事者たちに語らせている。彼らのアピールが言葉に乗って伝わってくる。会話のシチュエーションを設定し、自分たちの主張をカメラに向かって訴えるために演じているが、それは差し迫った状況だからこそ演じな>>続きを読む

映画プリキュアオールスターズF(2023年製作の映画)

-

初めて映画館で観たのだけれど、素晴らしかった。作品はもちろん観客がすばらしい。黙って座って観るということをしないのは、まさにそのような映画だからだ。暗闇の中でスクリーンの光を見るという映画体験において>>続きを読む

カルメンという名の女(1983年製作の映画)

-

ダイアログ、オフの音、フレーム内外の環境音の三つ巴的な衝突が面白かった。
映像のモンタージュの性に対して海・波のような観念性が音のモンタージュと合わさることで複雑なものになっていく。そこにその音を当て
>>続きを読む

カラビニエ(1963年製作の映画)

-

戦争を映画で描いてしまうと、それは既製品にしかならない。アーカイブ的な映像とこの映画のために撮影された映像とが入り混じることによって、本物と偽物の区別がどんどん撹乱されてしまう。
死や殺害は形式的なも
>>続きを読む

ゴダールの探偵(1985年製作の映画)

-

ジャンルの型取りに対してひっきりなしになっている音楽。音楽の大げささと、型取り的な形骸性のミスマッチが笑える。個人的には結構好きな部類。

その都度クレジットが挿入されるため作品そのものがある種オープ
>>続きを読む

ゴダールの決別(1993年製作の映画)

-

探偵が主人公の犯罪ものパスティシュのような外見だし、そういう雰囲気を随所にみせるものの、素直にパスティシュしていたころとは様子が違うように思えた。

宗教、またそれと結びついている西洋芸術をリファレン
>>続きを読む

大恋愛(1969年製作の映画)

-

背景の音や何かが落ちる音、壊れる音等のうるささと画の衝突が、会話やモノローグと画の不一致に置き換わった。そのぶん説話に馴染むようにはなりつつ、音で笑わせるみたいなセオリーは継承しているのかなと感じた。>>続きを読む

幸福な結婚記念日(1962年製作の映画)

-

車の普及とそれによる渋滞に対する風刺はジャック・タチにもみられる。歩く方が速いのではという不毛感は面白い。大金叩いて便利さを手に入れたはずなのにそれに縛られ逆に不自由する感じ。

分岐によるスリルとそ
>>続きを読む

健康でさえあれば(1966年製作の映画)

-

全体的に都市文明風刺・消費社会風刺という感じ。

『不眠症』は傑作。過剰な汗と過剰な驚き方、本の世界と現実のクロスカッティングが絶妙。少しだけ両者が交わるかんじ。ドラキュラの手が棺から出てくるのと、妻
>>続きを読む

絶好調(1965年製作の映画)

-

なにやっても上手くいかなくて絶好調とは程遠いのだが、終わりよければ全てよしということだろうか。

なんなんだ、あの空間は。浮浪者の集まりかと思えばそいうわけでもなく、都市で生きる(あるいは無理やり生か
>>続きを読む

ヨーヨー(1965年製作の映画)

-

音の実験室という感じ。セリフや劇伴以外の音、何かを落としたり、注いだり、ドアを開け閉めしたりする音が割れている。破裂音に近いのではないか。

劇伴の使い方が面白い。オフの音なのにそうではないかのように
>>続きを読む